スルホニルウレア系除草剤抵抗性のアゼトウガラシの出現とその対策

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要約

スルホニルウレア系除草剤に対する抵抗性生物型のアゼトウガラシが山形県東置賜郡川西町の水田に出現している。この生物型は従来の感受性生物型と比べるとおよそ100倍の除草剤抵抗性を示し、通常使用濃度のスルホニルウレア系除草剤では枯殺できない。 この抵抗性雑草は一発剤の連用によって出現した可能性が高い。 その防除には初期剤と中期剤の体系処理が効果的である。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:0187-66-2771
  • 部会名:水稲
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:普及

背景・ねらい

東北地域の水田では、スルホニルウレア系除草剤(以下SU剤と略す) を主成分とする一発剤の使用が急激に増加している。 この剤は水田雑草全般に幅広いスペクトラムを持つが、 数年前から一部の一年生雑草に対する不効問題が生じている。 そこで、そのうちの アゼトウガラシ のSU剤抵抗性を検定し、 防除方法を検討する。

成果の内容・特徴

  • 山形県東置賜郡川西町吉島において、 除草剤処理約1ヶ月後の時期に水田1,019筆を調査し、 111筆(約30ha)でアゼトウガラシの残草が認められた。
  • このアゼトウガラシは、ベンスルフロンメチル(SU剤の1種) による半数致死量が従来のアゼトウガラシの280倍であり、 通常使用濃度の2倍量の処理でもまったく影響を受けない (図2) 。 従って抵抗性生物型であると判断される。
  • ベンスルフロンメチルだけでなく、ピラゾスルフロンエチル、 イマゾスルフロンなど他のSU剤にも半数致死量に80~290倍の差がみられ、 これらSU剤の通常使用濃度の処理では防除効果がみられない (図2) 。
  • アゼトウガラシが問題となっている圃場では ベンスルフロンメチル・メフェナセット粒剤(ザーク粒剤) を中心とした一発剤が連用されており (表1) 、 これら一発剤の連用が抵抗性生物型を出現させた可能性が高い。
  • このアゼトウガラシには、プレチラクロール、 ビフェノックスを含む初期剤の発生前処理、ベンチオカーブ・シメトリン・MCPB、 フェノチオール・シメトリンなどの中期剤の1葉期処理が高い防除効果を示す。 一方、メフェナセット、エスプロカルブの1葉期処理には防除効果が見られない (表2) 。 現地圃場試験の結果では、 プレチラクロール粒剤とベンチオカーブ・シメトリン・MCPB粒剤の体系処理で 完全に除草できている。

成果の活用面・留意点

  • 除草剤散布後にアゼトウガラシだけが残草した場合は 抵抗性生物型である可能性が高く、上記の体系処理を適用することが推奨される。
  • 東北各地の水田では、 中干し期以降にゴマノハグサ科の雑草が残っていることがあるが、 この場合は漏水など他の要因も考えられることに注意する。
  • SU剤による防除は多年生雑草の発生が多い水田では有効であるため、 アゼトウガラシに抵抗性生物型が出現したことを理由に SU剤の使用を控える必要はない。

具体的データ

図1 アセトウガラシ

図2 スルホニルウレア系除草剤処理下におけるアゼトウガラシの枯死率

表1 山形県川西町のアゼトウガラシ多発圃場における除草剤使用量

表2 川西町産アゼトウガラシの数種除草剤による防除効果

その他

  • 研究課題名:除草剤投与下における抵抗性変異雑草の選択
                     淘汰と適応進化機構の解明
  • 予算区分 :大型別枠「生態秩序」
  • 研究期間 :平成8年度(元~10年)
  • 発表論文等:スルホニルウレア系除草剤抵抗性アゼトウガラシの出現,
                     雑草研究42(別), (16), 1997
                     山形県川西町におけるスルホニルウレア系除草剤抵抗性,
                     アゼトウガラシの分布, 雑草研究42(別), (18), 1997
                     スルホニルウレア系除草剤抵抗性アゼナ類の防除,
                     雑草研究42(別), (24), 1997