イネ科多年生植物主体の畦畔における抑草剤による省力的管理法

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要約

水田畦畔において、茎葉刈り取り後の再伸長株にビスピリバック液剤を散布することにより、畦畔の草丈を2~3ヶ月間抑制できる。この方法はハルガヤ、チガヤ、イシバ等のイネ科多年生植物が優占する畦畔に活用できる。また、畦畔造成時にノシバを張った場合の管理にも有効である。イネに関しては影響がほとんどなく、飛散によるイネへの薬害はない。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・除草制御研究室
  • 担当:東北農業試験場・企画連絡室・業務第3科
  • 連絡先:0187-66-2771, 019-643-3426
  • 部会名:水稲
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

圃場に傾斜のある地域の大区画水田では、 畦畔が通常のものより急傾斜で幅広い畦畔となる。 しかしながらそうした畦畔では、 稲作の担い手の高齢化が進んでいる近年の状況では草刈りによる管理が困難であり、 省力的管理法の早急な開発が必要とされている。 砂壌土やクロボク土の畦畔は裸地化すると崩れるため、 それらの畦畔に茎葉処理型の除草剤で畦畔雑草を完全に枯らす方法は適用できない。 また、除草剤が水稲に飛散した場合の薬害も無視できない。 そこで、水稲に飛散しても害のない水稲用除草剤を用いて畦畔雑草を抑草する 省力的な畦畔管理法を開発する。

成果の内容・特徴

  • ハルガヤを主体とする畦畔では、水稲移植前に草刈りをし、 10~14日後に再伸長してきたものにビスピリバック(Na塩3%)液剤を (30~50ml/aを10 l/aの水に溶解)散布すれば、 その時点における一年生広葉雑草を枯殺し、 イタドリ、ヨモギおよび多年生イネ科雑草の草丈を2~3ヶ月抑草する(表1)。 この処理では畦畔が裸地化しないため、畦畔の崩壊はみられない。
  • 上記の方法はチガヤやノシバの優占する畦畔でも抑草効果が高く、 MCPP液剤や土壌処理剤を同時処理することによって さらに多年生広葉雑草の枯殺効果や草丈の高い一年生雑草の侵入防止効果が高まる(表2)。
  • 畦畔造成直後に張ったノシバは、本剤によって黄化して生育が一時停止する。 しかし枯死することはなく、畦畔面積の30%しかノシバを張らなかった場合でも、 本剤を2回散布することにより草丈の低いノシバの純群落が形成される(写真)。
  • 本剤散布時の飛散による薬害は移植直後の水稲に多少みられるが、 回復が早く実用的には問題が見られない(表3)。 活着後の水稲にはほとんど影響がみられない。

成果の活用面・留意点

  • ビスピリバック液剤は一部の牧草やカラスムギなどの雑草、 ヨシやススキなどの大型イネ科植物には草丈抑制効果が劣るので、 これらの植物が生育している畦畔では有効でない。
  • シロクローバーなど広葉が優占する畦畔群落では裸地化する恐れがあるので、 そうした植生でかつ崩れやすい土壌では使用できない。
  • トウモロコシ、大豆には強い薬害があり、飛散すると影響がでるため、 これらの作物が栽培されている転作畑の畦畔では使用できない。

具体的データ

表1 草刈り再生後の抑装剤等の処理による群落被度の推移と抑草効果

表2 ビスピリバック溶剤の移植8日後処理による水稲への影響

写真 芝張り33日後のビスピリバック溶剤

表3 ビスピリバック溶剤等の2回散布と畦畔の群落被度

その他

  • 研究課題名:畦畔管理の省力化
  • 予算区分 :地域総合研究
  • 研究期間 :平成8年度(5~8年)
  • 発表論文等:抑草剤を利用したイネ科植生主体の畦畔の管理法,
                      雑草研究, 41巻別号I, 1996.