イネカラバエの夏休眠と冬休眠にみられる光周反応の遺伝分析
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要約
イネカラバエの2化型と3化型の夏休眠(老熟幼虫期)と冬休眠(1齡幼虫期)の光周反応の違いには、X染色体上の遺伝子が主働遺伝子的に働き、さらに常染色体上の遺伝子が微動遺伝子として作用する。
- 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田病虫害研究室
- 連絡先:0187-66-1221
- 部会名:生産環境
- 専門:作物虫害
- 対象:昆虫類
- 分類:研究
背景・ねらい
イネカラバエは北海道・東北地域では年2世代を経過し、
その他の地域では年3世代を経過する。
年間世代数の相違は夏休眠と冬休眠の光周反応の違いである。
そこで、2化型と3化型の交雑試験によって、
夏休眠と冬休眠の違いを支配する遺伝様式を明らかにする。
成果の内容・特徴
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卵期を長日とした場合、2化型は中間日長で発育し、
3化型は中間日長で老熟幼虫期に夏休眠が誘導される(表1)。
幼虫期が長日の場合には2化型が老熟幼虫期に夏休眠し、3化型が発育する(表1)。
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正逆交雑によるF1オスの夏休眠を含む幼虫期間は異なる。
一方、正逆交雑のF1メスは互いに近い幼虫期間を示す(表1)。
F2オスでは互いに近い幼虫期間を示し、
F2メスはF1メスよりもそれぞれの母親に近づく(表1)。
このように交雑後代の反応は伴性遺伝を示す(図1)。
両系統の蛹化率が最も異なる時期のF2の分離比の検定から、
X染色体上の遺伝子が主働遺伝子(不完全優性)として作用する。
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F1と親系統の戻し交雑では、主働遺伝子の作用だけでは説明できない分離がみられ、
X染色体上の主働遺伝子と常染色体上の微働遺伝子の相加的効果および非相加的効果
(非対立遺伝子間の相互作用)がみられる。
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卵期の短日条件は1齢幼虫態での冬休眠を誘導する。
50%の個体が休眠する卵期の臨界日長は2化型で長く3化型で短い(表2)。
交雑F1とF2の休眠誘導の臨界日長も伴性遺伝を示す。
成果の活用面・留意点
イネカラバエの2化型と3化型の夏休眠と冬休眠の違いは、いずれも伴性遺伝する。
これらの結果は光周反応の地理的変異の形成を理解するうえでの重要な資料となる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:イネカラバエの化性分化機構の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成8年度(平成4年~8年)