ダイズわい化病を媒介するツメクサベニマルアブラムシ

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要約

シロクローバで繁殖するツメクサベニマルアブラムシが、ダイズわい化ウイルスYP系統を媒介することを発見した。保毒した有翅虫はダイズ圃場に飛来し、ウイルスを持ち込む。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・害虫発生予察研究室
  • 連絡先:019-643-3466
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物虫害
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ダイズわい化病はダイズわい化ウイルス(SDV)によって引き起こされ、 ダイズに深刻な収量低下をもたらす。 SDVはこれまでジャガイモヒゲナガアブラムシによって 特異的に媒介されると考えられていたが、 最近、エンドウヒゲナガアブラムシによって媒介され、 ジャガイモヒゲナガアブラムシでは媒介されない新系統のウイルス(SDV-YP) が発見され、盛岡市を始め、 岩手県以南の本州各地に広く分布していることがわかった。 SDV-YP系統は実験条件下ではエンドウヒゲナガアブラムシによって媒介されるが、 この虫はダイズ圃場にはほとんど飛来しないため、 ダイズへのSDV-YP系統の媒介に関与しているとは考えにくい。 そこで、SDVのウイルス源であるシロクローバで繁殖するアブラムシのうち、 エンドウヒゲナガアブラムシ以外にSDV-YP系統を媒介する種がいないかどうかを、 媒介実験と圃場調査によって検討した。

成果の内容・特徴

  • 媒介実験の結果、シロクローバで繁殖するアブラムシのうち、新たに ツメクサベニマルアブラムシ Nearctaphis bakeri (Cowen)が SDV-YP系統を媒介することを発見した。 このアブラムシは、ジャガイモヒゲナガアブラムシによって媒介される SDV-YS系統を媒介することはできなかった(表1)。
  • 1996年5月末から7月末まで ダイズ圃場の脇に放置したダイズ苗に飛来したアブラムシ有翅虫のうち、 ツメクサベニマルアブラムシ有翅虫だけがSDV-YP系統を媒介した。 同時期に採集されたジャガイモヒゲナガアブラムシ、ダイズアブラムシ、 コンドウヒゲナガアブラムシ、マメアブラムシはウイルスを媒介しなかった(表2)。したがって、 SDV-YP系統を保毒したツメクサベニマルアブラムシ有翅虫がダイズ圃場に飛来し、 ウイルスを持ち込むことがわかった。

成果の活用面・留意点

SDV-YP系統の感染によるとみられるダイズわい化病は、 岩手県以南の本州各地で発生している。ダイズ圃場での媒介虫が判明したため、 本病の有効な防除法の開発が期待される。

具体的データ

表1 3種類のアブラムシによるSDV2系統のダイズへの媒介実験結果

表2 圃場に放置したダイズ苗上で採集されたアブラムシ有翅虫の数とウイルス媒介能力

その他

  • 研究課題名:ダイズわい化病媒介アブラムシ類の発生動態機構と保毒虫の行動解析
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成元~8年)
  • 発表論文等:異なるアブラムシが媒介するダイズわい化ウイルス2系統の圃場内分布,
                      第41回日本応用動物昆虫学会大会講要, (204), 1997