分子レベルにおけるダイズモザイクウイルス5系統の類縁関係

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要約

本邦のダイズモザイクウイルス (SMV) 5系統 (A、B、C、D、E) の外被タンパク質遺伝子の塩基配列から、AとD、BとEはそれぞれ比較的近い類縁関係にあることが推察される。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・病害生態研究室
  • 連絡先:019-643-3465
  • 部会名:生産環境生物工学
  • 専門:作物病害
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

SMVによるダイズモザイク病はダイズの重要ウイルス病害で、 植物病理学的な研究蓄積も多く、 また、抵抗性品種育成の面においても一定の成果が得られている。 本邦のSMVには現在のところA、B、C、D、Eの5つの系統が存在することが知られており、 局部病斑を形成する抵抗性品種でAを継代接種するとDが派生し、 同様にしてBからEが派生すると報告されている。そこで、 これら5系統の遺伝子解析を行い、SMVの系統間の関係を分子レベルで明らかにする。

成果の内容・特徴

  • SMV5系統(ジーンバンク保存株: 104063~104067)について、 外被タンパク質(CP)遺伝子の塩基配列を決定し、5系統の類縁関係を明らかにした。
  • SMV-A~E5系統のCP遺伝子はいずれも795塩基からなり、 265残基のアミノ酸をコードするものと推察される。
  • 5系統すべての間で塩基レベルで91.7%以上、 アミノ酸レベルで97.0%以上の相同性がある(表1)。
  • これら遺伝情報から系統間の類縁関係を考察すると、 AとD、BとEはそれぞれ比較的近い関係にある(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 今回得られた知見は、AからD、BからEが派生する可能性を裏付けるもので、 SMVの系統分化を考える上で参考となる。
  • 各系統に対する抵抗性品種育成にあたっては、 SMVの変異の方向性に注意する必要がある。

具体的データ

表1 SMV5系統間の外被タンパク質(CP)遺伝子の相同性

図1 CP遺伝子の塩基配列から類推したSMV5系統の類縁関係

その他

  • 研究課題名:ダイズモザイクおよびわい化ウイルスの系統分化の遺伝情報解析
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成6年~平成8年)
  • 発表論文等:ダイズモザイクウイルス(SMV)5系統の外被タンパク質遺伝子の塩基配列
                      (講要)、日本植物病理学会報、61巻3号、284-285頁、1995。