樹高に伴い樹葉中のタンニン含量が変わるヌルデの採食防御機構
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要約
ヌルデ樹葉中のタンニンは大型草食動物の採食に対する化学的防御物質として機能する。そのタンニン含量は樹高、及び同一個体内での樹葉の分布する高さに伴って変動し、低樹高及び低位置の樹葉タンニン含量が高く、そのためヌルデ稚樹は採食を逃れる頻度が高い。
- 担当:東北農業試験場・草地部・草地管理研究室
- 連絡先:019-643-3562
- 部会名:畜産(草地)
- 専門:生態
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
二次林伐採跡地が放牧により半自然草地化する過程のなかで
草食動物が果たす役割を解明するため、
伐採跡地に日本短角種成雌牛を伐採翌年から毎年春夏秋の3回放牧した。
このなかでヌルデは当初跡地に発芽して以来5年間採食が認められず
2m近くまで伸びて第1位の優占種となったが、6年目に初めて採食された。
ヌルデ樹葉中の草食動物に対する採食防御物質が
経時的に変化することが予想されたため、樹葉中タンニン含量の変動パターンと
タンニンに対する草食動物の採食反応をみた。
成果の内容・特徴
ヌルデの樹葉中タンニン含量と樹高等の関係を調べた。
また、タンニン含量の異なるヌルデ樹葉の採食量を舎飼いのシカ、
カモシカに対しカフェテリア方式により調べた。
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ヌルデは樹高が高くなるにつれ樹葉中タンニン含量が低下し、
かつその被食度は増した(図1)。
樹高2m以上ではタンニン含量の変化は小さかった。
タンニン含量6%前後に、牛に採食されるか否かの閾値の存在が予想された。
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ヌルデの同一個体内では、樹葉中タンニン含量は低い枝の方が高い枝より高かった(表1)。
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舎飼いのシカ、カモシカにおいても樹葉中タンニン含量と採食量は負の相関を示した(図2)。
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各動物種の口の届く高さはシカ、カモシカ1.8m、牛2.1mであった(図3)。
牛がヌルデを採食し始めた2m前後という高さは、
ヌルデの分布域に一般的に生息するシカ、
カモシカの採食を逃れる高さとほぼ一致する。
ヌルデのもつこのような化学的防御特性の背景には、
体高1m前後の野生草食動物の選択圧の関与が示唆される。
成果の活用面・留意点
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ヌルデは伐採跡地等の撹乱を受けた場所に出現する先駆樹種であるが、
そのような撹乱地の放牧条件下での植生遷移機構の解明、
また放牧家畜の嗜好性及び植物の対被食戦略の解明の参考となる。
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タンニンの定量は、総タンニンを対象とするフォーリン・デニス法によった。
具体的データ




その他
- 研究課題名:アカマツ林伐採跡地の放牧条件下における植生遷移機構の解明
- 予算区分 :大型別枠(生態秩序)
- 研究期間 :平成8年度(平成元年~平成10年)
- 発表論文等:福田栄紀・目黒良平・八木隆徳・梨木守、
森林極相地帯のシバ草原成立機構における草食動物の役割
5.タンニン含量を樹高の伸びに伴って変えるヌルデの採食防御機構、
平成9年度日本草地学会大会講演発表、1997