イネにおけるトリプシンインヒビター遺伝子組換え体の作出

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要約

トリプシンインヒビター遺伝子をイネ(日本晴)に導入し、 害虫ニカメイガに対する成長抑制効果を有するイネを作出した。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田病虫害研究室,農業生物資源研究所・生物工学部・遺伝子設計研究室
  • 連絡先:0187-66-1221
  • 部会名:生産環境・生物工学
  • 専門:作物虫害・バイテク
  • 対象:昆虫類・稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年、作物が本来持っていない殺虫性、耐病虫性遺伝子を組換えた遺伝子組換え植物を病害虫防除に利用し、農薬の使用を減少させ、生産コストを下げる試みがなされている。本研究では、イネの害虫ニカメイガの消化酵素を阻害するタンパク質の遺伝子を遺伝子組換え技術によりイネに導入し、耐虫性を付与することをねらいとした。

成果の内容・特徴

  • ニカメイガ幼虫の腸内消化酵素の主成分であるトリプシンを阻害するタンパク質(シカクマメ由来トリプシンインヒビター)の遺伝子(mwtilb)を人工合成し、イネ(日本晴)にアグロバクテリウム法で導入した。
  • 遺伝子組換えに用いたベクターは、導入した遺伝子の発現量がイネで高発現となるような転写制御領域(プロモーター)を持ち、さらに遺伝子組換え体をハイグロマイシンで効率よく選択できるような構造のものを開発して用いた (図1)。
  • トリプシンインヒビター遺伝子は、ハイグロマイシン耐性で選抜した遺伝子組換え体の約95%に確認された(PCR法)。
  • これら遺伝子組換え体では、トリプシンインヒビタータンパク質の発現が確認された (図2)。
  • トリプシンインヒビタータンパク質の発現が確認された遺伝子組換え体には、ニカメイガ幼虫の成長抑制効果が存在した (表1)。

成果の活用面・留意点

実用化に向けては遺伝子組換え体の安全性の評価、導入遺伝子の後世代への安定した遺伝の試験が必要である。

具体的データ

図1.遺伝子組換えに用いたベクターの構造

 

図2.遺伝子組換え体におけるトリプシンインヒビタータンパク質の発現

 

表1.トリプシンインヒビター遺伝子組換え体のニカメイガ幼虫に対する成長抑制効果

その他

  • 研究課題名:食害性害虫の抵抗性素材の作出
  • 予算区分:バイオテクノロジー先端技術開発研究(バイテク植物育種)・経常
  • 研究期間:平成9年度(平成6年~8年)
  • 発表論文等:Characteristics of digestive proteases in various insect guts,XX International Congress of Entomology, 181, 1996.特許「トリプシンインヒビターの人工合成遺伝子」特願平9-236332(平9年9月出願)