水田での冷害を再現するスポット冷水深水潅漑装置
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要約
水田で冷害を再現可能な可搬式のスポット冷水深水潅漑装置を作製した。
この装置は水田ごとに穂孕期不稔に及ぼす低温の影響を解析することが可能であり、
気象条件や場所の制約を受けずに水田の冷害危険度を判定できる。
- 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・低温ストレス研究室
- 連絡先:019-643-3464
- 部会名:やませ環境
- 専門:土壌
- 対象:水稲
- 分類:研究
背景・ねらい
冷害年には多窒素栽培は冷害の被害を助長することが知られている。ポット試験は施肥量や根域制限等の条件が水田と大きく異なるため、肥培管理が穂孕期不稔におよぼす影響を実験的に解析する方法として不十分である。また、水田全体を冷水深水処理する方法は、農家が栽培をおこなっている現場水田での試験は困難である。そこで、部分的に冷水深水処理を行うことによって肥培管理が穂孕期不稔におよぼす影響を調査できる装置を作製し、水田の肥培管理条件を考慮に入れた冷害に対する危険度を評価する手法を開発した。
成果の内容・特徴
- 試作したスポット冷水深水潅漑装置は1200kcal/hの冷却機を備えた冷水循環装置と稲を株ごとに冷水深水条件にする塩ビ製円筒をホースで接続し、冷却水を循環させて温度を制御する簡便なものである (写真)。可搬性で、発電機(5kW/h)等を併用すれば、気象条件や場所に左右されずにどこの水田でも冷害を再現し、現場の水田の冷害危険度を判定できる (図1)。
- 晴天日には水温が設定温度以上に上昇するが (図2 8/3) 日射量の少ない日は、設定温度に近い温度で制御可能である (図2 8/4)。冷水処理期間中の気温、時間積算日射量、水田水温の最高値はそれぞれ、 32.5度C、900W/平方メートル、35度Cであったが、冷水装置の平均水温は、13.8度C、16.7度C、18.2度C、23.2度Cで、冷害再現に十分な冷温条件であった。
- ササニシキを堆肥5t・10a-1のみ施用の水田で栽培し、 7月31日から8月9日までの9日間冷水処理した場合、処理期間中の平均水温と稔実率をプロットすると 図3のような関係が得られ、 30%の稔実率となる温度は13.7度Cと推定された。
成果の活用面・留意点
- 肥培管理の異なる水田での冷害被害程度の差を定量的に予測するために利用可能である。
- 実際の収量予測には稔実率に収量レベルの要素を考慮する必要がある。
- 高精度温度制御には、冷却能力の高い装置を使う、処理株数を減らす等の改良が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:土壌栄養と地象データによる作物冷害の解析
- 予算区分:緊急開発研究(冷害予測)
- 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)