大区画散播水稲の苗立ち数の評価と確保法
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要約
大区画散播直播の苗立ち数は、播種精度と圃場環境に支配され、
苗立ち数が不足すれば収量の低下を、
過剰では倒伏を誘発して同じく収量低下を招く。
苗立ち数50~160本/平方メートル(品種「どまんなか」)では、
苗立ち数に起因する収量低下は認められない。
これは、播種機の改善による作業精度の向上、圃場均平度の向上、
播種前の作溝(溝切り)による落水の徹底、
等で苗立ち環境の整備と倒伏回避との条件を両立させた効果である。
- 担当:東北農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
- 連絡先:019-643-3411
- 部会名:作業技術
- 専門:作業
- 対象:稲類
- 分類:指導
背景・ねらい
大区画水田の直播方式として省力性に優れる散播において、安定生産への鍵の一つである苗立ち数について検討した。大区画圃場(200m×60m)の実証栽培において細かなメッシュ調査(10mメッシュ)を実施し、苗立ち数と収量の関係、苗立ち数不足を招く圃場条件等を検討した。この結果に基づいて、苗立ち数の適性範囲とその確保法を明らかにした。
成果の内容・特徴
- 散播直播の苗立ち数不足は収量減を招くが、山形県遊佐町で「どまんなか」を供試した結果からは、 50本/平方メートル未満の地点で収量低下となる。また、苗立ち数過剰は倒伏等により収量減となるが、草丈の抑制と圃場の土壌表面硬度確保を図れば、 160本/平方メートル程度までは問題ない。
- 播種機を改良して種子落下の空白や無用な重なりを防いだこと、圃場の均平度向上、表面滞水排除、作溝(溝切り)の改善等を図ることにより苗立ち数の確保・収量の安定化が達成できる。この作溝法は圃場の乾燥促進効果も合わせ持つので、倒伏抑制効果があり、苗立ち数の上限に対し従来より許容度を大きくする。
成果の活用面・留意点
- 大区画圃場に散播方式による直播栽培を行うときの苗立ち数確保の基本的な考え方として活用できるが、収穫に到るまでには生育期間を通じた管理、倒伏回避策の実施法等も大きく影響するので、総合的技術の中で解釈し、活用する必要がある。
- 苗立ち数の指針値は品種や気温等それぞれの条件に応じ検討すること。
具体的データ


その他
- 研究課題名:超省力水稲直播栽培技術を基幹とする寒冷地大規模生産システムの確立
- 予算区分 :地域総合
- 研究期間 :平成5~9年度
- 発表論文等:「寒冷地大区画水田における湛水散播による水稲直播栽培技術の安定化
(第2報) -大区画散播水田の苗立ち数の評価と確保法-」農機学会第57回年次大会講要、p75-76、1998。