湛水直播におけるカルガモの加害状況と生息実態
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要約
湛水直播において問題となる鳥害について、
その発生状況とおもな加害鳥であるカルガモの生息状況について調査した。
被害はカルガモの生息域である河川や湖沼に近い圃場ほど発生が多く、
またカルガモの密度が高い地域ほど被害程度が大きかった。
- 担当:東北農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
- 連絡先:019-643-3411
- 部会名:水稲
- 専門:作物虫害
- 対象:水稲
- 分類:指導
背景・ねらい
水稲の直播栽培では、播種以降生育初期にかけて鳥類による大きな被害が発生することがあり、これが直播栽培導入の阻害要因になっている場合が少なくない。そこで、加害鳥類の生息状況や行動様式を明らかにすることにより、鳥害を回避するための方策を検討する。
成果の内容・特徴
- 湛水直播田における鳥害の多くはカルガモによるもので、被害は播種後6週間程度まで発生する。加害は昼夜を問わず発生し、本種のおもな生息域である河川からの距離が近い圃場ほど被害率、被害面積ともに高い傾向が見られた (図1)。加害時期に近隣の水張り転作田を観察したところ、直播圃場と同程度の飛来が認められた。
- カルガモは、春から秋にかけては広く分布しているが、冬期間には集中する傾向が見られた。被害発生時期のカルガモ個体数の年次変動はあまり大きくないと思われる。
- 東北各地の直播実施地域の播種時期におけるカルガモ生息密度は地域によって異なり、密度が高いほど鳥害を受ける程度も高くなる傾向が見られた (表1)。ラインセンサスによる生息密度が5羽/km以上(河川沿いの調査の場合)の地域では、カルガモ害に対する注意が必要である。
- 被害発生時期のカルガモ生息数を把握するためには、水田の湛水事前の時期に調査を行うのが有効である。山形県遊佐町の調査例では、町内全域で約500羽が生息していた (図2)。生息総数から最大採餌量とそれに基づく最大被害面積が推定できる。
成果の活用面・留意点
湛水直播の実施に際しては、カルガモの生息数が少ない地域で、生息域から離れた圃場を選択するのが得策である。直播田へのカルガモの飛来を軽減する一方法として、生息域近くに水張り転作田を配置する等の対策が有効である。なお、直播田の所在と鳥害の程度については各県から情報をいただいた。
具体的データ


その他
- 研究課題名:直播田における鳥害発生の実態解明と対策技術の開発
- 予算区分:地域総合
- 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)