ソバ種子に含まれるラジカル消去成分

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要約

ソバ子実からラジカル消去成分としてルチン、(-)-エピカテキンに加え、 これまでに検出例の無い3種のカテキン類を単離した。 これらはソバ子実に豊富に含まれており、その活性はルチンよりも高い。 ソバ殻には活性成分として、ルチン以外のフラボノイドに加え、 低分子のポリフェノール、及びプロアントシアニジンが含まれる。

  • 担当:東北農業試験場・作物開発部・品質評価研究室
  • 連絡先:019-643-3513
  • 部会名:流通・加工
  • 専門:食品品質
  • 対象:雑穀類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ソバは栄養豊富な健康食品として認識されており、その植物体および種子には、毛細血管強化作用を持つルチンが含まれていることが知られている。また近年、成人病をはじめとする種々の疾病にフリーラジカルが関与することが判っており、特に予防的観点により、酸素毒からの防御作用である抗酸化性を持つ物質が注目されている。しかしこれまでにソバに関しては抗酸化成分の検索は行われていない。そこで、ソバの新用途開発、および高付加価値化に関する情報を得ることを目的として、ソバ種子に含まれているラジカル消去成分を、部位別に明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ソバ子実(岩手在来種)には、ラジカル消去成分としてルチンの他にカテキン類 (図1)が豊富に存在しており、 同濃度(w/v)での活性はルチンより高い(図3)。
  • 得られたカテキン類の中では、広く作物に認められる (-)-エピカテキンよりも、そのエステル化物である (-)-エピカテキン 3-O-(3,4- ジ -O-メチル)-ガレートや、 配糖体の(+)-カテキン 7-O-β-D-グルコピラノシドの方が収量が多かった。 なお、ルチンの収量は26.1mgであり、微量成分として(+)-カテキンも検出された。 (-)-エピカテキンおよび(+)-カテキン以外はこれまでにソバでの検出報告は無く、 初めて単離された化合物である。
  • ソバ殻(岩手在来種)からは、ラジカル消去成分としてルチン以外にもケルセチン、 ヒペリン、プロトカテキュ酸、プロトカテキュアルデヒドが単離・固定された (図2)。またラジカル消去活性は検出されないが、 抗酸化成分として知られているイソビテキシンや、 その同位体であるビテキシンも単離された。その他の主要な活性成分としては、 プロアントシアニジン(縮合性タンニン)のポリマーが検出された。
  • ソバ殻から得られた化合物の活性のラジカル消去活性は、 フラボノールについてはケルセチン>ヒペリン>ルチンの順である (図4)。 またプロトカテキュ酸、プロトカテキュアルデヒドについては、 初期のラジカル消去活性はルチンより低いものの、 抗酸化剤としての作用時間は長い。

成果の活用面・留意点

  • 活性測定はリノール酸メチルを基質とし、 AMVN:2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) を反応開始剤とする方法を用いている。
  • 単理化合物の収量は、子実または殻に含まれている量を正確に示すものではない。
  • ソバ種子のラジカル消去活性には品種・系統間差があることが確認されていることから、単離された化合物の含量も変異があると推定される。

具体的データ

図1.ソバ子実から単離されたラジカル消去成分

 

図2.ソバ殻から単離されたラジカル消去成分

 

図3.ソバ子実単離化合物のラジカル消去活性の推移F1-F4の化合物名は図1.を参照図4.ソバ殻単離化合物のラジカル消去活性の推移

 

 

その他

  • 研究課題名:雑穀類の抗酸化成分の解明と遺伝資源の評価
  • 予算区分 :経常、総合的開発研究(新用途畑作物)
  • 研究期間 :平成9年度(平成8年~10年)
  • 発表論文等:
    Antioxidant compounds from buckwheat (Fagopyrum esculentum Moench) hulls.
    Journal of Agricultural and Food Chemistry. 45, 1039-1044.(1997)
    Catechins as antioxidants from buckwheat (Fagopyrum esculentum Moench) groats.
    Journal of Agricultural and Food Chemistry. (in press)