定植前重点施用によるリン酸施用量の削減
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要約
キャベツ苗に対し、リン酸を定植前施用することで、
総リン酸施用量を40%にまで削減しても慣行施肥と同等の収量が得られ、
リン酸利用効率を飛躍的に高めることができる。
- 担当:東北農業試験場・畑地利用部・作付体系研究室、畑作物栽培生理研究室
- 連絡先:024-593-5151
- 部会名:畑作物
- 専門:栽培
- 対象:茎葉菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
火山灰土壌畑におけるリン酸の利用率は5~20%と非常に低い。限りあるリン酸資源の有効利用のためには利用率を飛躍的に高める必要がある。そこでリン酸の吸収・固定の少ない培土で育苗したキャベツ苗にリン酸を定植直前に与える施肥法について検討した。
成果の内容・特徴
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慣行の1個体あたりのP施用量の20%にあたる
P=0.377g相当量の第一リン酸カリウム(KH2PO4)
または第一リン酸アンモニウム(NH4H2PO4)
を50mLの水に熔かし(P=7.545gL-1、 pH=6.2)、
定植直前に1回、または定植前日と直前の2回(40%相当)キャベツ苗に施用してから、
それぞれ元肥リン酸半量施用、無施用の圃場に定植すると、
慣行施肥と同等の収量が得られ、
最大でリン酸施用量を慣行の40%にまで削減することができる。
しかし、緩効性肥料を用いた場合は十分な効果は得られない
(図1)。
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本施肥法により、リンの利用率は約50%にまで飛躍的に高めることができる
(図2)。
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定植前重点施用により、リン酸施用量が削減できた要因として、
慣行施肥では土壌に固定、不可給化するリンを節約できるだけでなく、
生育中期までのリン吸収が高まり、生育が促進されることにより
(図3)、最終的収量が確保される。
成果の活用面・留意点
- リン酸塩水溶液を与えるとき、1回施用では軽微であるが、 2回施用ではクロロシス、葉枯れ等の濃度障害が発生することがある。アンモニウム塩ではカリウム塩に比べ障害が発生しやすい。
- 水溶液のpHが低下すると障害が顕著になるので、最低でもpHを6以上に調整する必要がある。
- 今後、緩効性肥料との組み合わせ、高濃度リン酸耐性品種の育成などの回避技術の確立が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:定植重点施用による効率的リン酸施肥体系の開発、畑作物の過剰栄養耐性機構の解明
- 予算区分:場特定(経常)、経常
- 研究期間:平成7年度、平成7~8年度(平成7~11年)
- 発表論文等:定植前重点施用によるリン酸施用量の削減、土壌肥料学雑誌、第68巻・第6号、623~628頁、1997年(平成9年)