コムギ縞萎縮ウイルスのコムギ体内での増殖と病徴発現の温度条件
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要約
寒冷地では、秋播コムギは秋のうちにコムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)に感染し、
積雪条件下でもウイルスは増殖する。縞萎縮病の病徴は融雪後に現れ、
生育後期には見かけ上消えるが、ウイルスは生育後期まで高頻度に検出される。
病勢進展は5度C前後が、WYMVの増殖は10度C前後が適温である。
- 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・病害生態研究室
- 連絡先:019-643-3465
- 部会名:生産環境
- 専門:病害
- 対象:小麦
- 分類:研究
背景・ねらい
コムギ縞萎縮病は小麦の根に寄生するポリミキサ・グラミニス菌で媒介されるコムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)によって起こる土壌病害である。これまで、コムギは秋期のうちにWYMVに感染し、早春に発病するが、生育後半には病徴が消えることが判っていた。しかし、これらの期間中に、どのような条件でWYMVが増殖し、コムギが発病から回復に至るかは不明であった。
そこで、コムギがWYMVに感染してから発病するまで、どのような条件が必要であるか明らかにした。
成果の内容・特徴
- 秋期媒介菌とともにコムギの根に侵入したWYMVは、はじめコムギの地下部で検出され、続いて地上部でも検出されるようになる。 WYMV検出率の増加は積雪下でも続く(図1)。
- WYMVは積雪下でもコムギの地上部で増殖する。しかし、 10度C付近のほうが、増殖は良好である(図2)。
- 本病の病徴は融雪後現れ、平均気温5度C前後でその症状が進む。平均気温が10度Cを越えると病徴は消える(図3)。
- 病徴が消えてもWYMVはコムギ体内から高頻度で検出される (表1)。
成果の活用面・留意点
- コムギ体内でのWYMVの増殖条件、病徴の発現条件に間して得られた知見は、今後媒介菌の生態とあわせて検討することで、コムギ縞萎縮病の耕種的防除法開発につながる。
- 人工気象下で効率的に発病させるための条件が明らかとなり、抵抗性遺伝資源の評価が効率的に行えるようになる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:コムギ縞萎縮病ウイルスの動態解析
- 予算区分:経常研究
- 研究期間:平成9年度(平成7年度~平成9年度)
- 発表論文等:低温化におけるコムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)の冬コムギ体内での増殖日植病報 63巻 5号 1997。