小葉の画像解析によるシロクローバのエコタイプ簡易分類法

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要約

シロクローバの小葉に画像解析を適用することによって、 エコタイプ(生態型)を簡易分類することができる。 画像解析から得られた4つの葉形特徴量が、新しい分類指標として使用可能であり、 それらの主成分分析の結果、エコタイプを葉形のタイプによって分類できる。

  • 担当:東北農業試験場・草地部・飼料作物研究室
  • 連絡先:019-643-3563
  • 部会名:畜産(草地)
  • 専門:育種
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

東北地域の野草地、人工草地、シバ草地および公園緑地などに存在するエコタイプ (生態型)を利用することによって、東北地域の環境に適応したシロクローバを育種することが簡便になると予想される。そのためには、東北地域のエコタイプを分類し、目的別に使い分ける必要があるが、従来の分類法では植物体に関する形質を多数調査する必要があった。そこで、簡便な方法として、シロクローバの小葉に画像解析を適用し、得られた特徴量から新しい分類指標を開発し、育種の初期選抜に利用する。

成果の内容・特徴

  • シロクローバの中央小葉をCCDカメラより、デジタル画像化し、光磁気ディスクに保存する。その後、輪郭を抽出し、輪郭上の葉柄基部点と小葉先端点を選択した上で一連のプログラムを実行し、 8種の葉形特徴量を算出する(図1)。
  • 1.で得ることのできる葉形特徴量は、 (1)「葉面積」、(2)「周囲長」、(3)「円形度」、 (4)「葉長(葉柄基部点から中肋先端点までの長さ)/葉幅比(最大葉幅長)」、 (5)「小葉全体の面積に占める中肋先端点より先にある面積の割合」、 (6)「葉柄基部点、中肋先端点、最大葉幅部によって形成される四角形に対する小葉の当てはまり具合」、(7)「小葉の左右の対称性(左右の面積比)」および (8)「中肋上における葉柄基部点からの小葉の重心の位置」の8種である (図1)。ただし、今回の解析では葉面積により基準化しているため、解析のために得られる特徴量は葉面積を除いた7種である。
  • 東北地域の各エコタイプについて、それぞれ小葉の画像解析を行い、葉形特徴量を得た。7種の葉形特徴量についてエコタイプと反復を要因とした二元配置の分散分布を行った結果 (表1)、特徴量の(4)(5)(6)および(8)の4種の特徴量においてエコタイプ間で有意な差があることが判明し、エコタイプを識別する分類指標として使用できることが明らかになった。
  • 4特徴量の主成分分析の結果、第1主成分の寄与率が54,9%、第2主成分の寄与率が28.6%であった。また第1主成分は、特徴量(6)によって主に説明され(固有ベクトル=0.61)、第2主成分は、特徴量(5)によってそれぞれ説明されることが判明した (固有ベクトル=0.80)。得られた第1主成分および第2主成分スコアの散布図から、採取された東北地域のシロクローバエコタイプが大きく分けて 3つに分類できることが判明した(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本方法において、品種およびエコタイプを簡便に分類でき、品種の母材料として活用できる。
  • 十分に展開したシロクローバの小葉を材料として使用するため、匍匐茎の先端から3節目以降の小葉を採取する必要がある。
  • 小葉の模様(葉班)についての画像解析を、今後検討する必要がある。
  • 高精度な分類のためには、植物体のデータを含めて解析することが必要である。

具体的データ

図1. 表1.

 

図2.

 

その他

  • 研究課題名:画像解析によるシロクローバのエコタイプの簡易評価法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成7~9年)
  • 発表論文等:シロクローバの葉形質の画像解析によるエコタイプ分類の試み、日本草地学会誌42号(別) pp134-135,1995