舎飼い環境下のニホンジカの飼料消化性と維持・増体に要するTDN量の推定

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要約

ニホンジカを舎飼い環境下で飼養した場合,冬期間は成長期であっても増体は期待 できず,また増体する春~秋においても飼料中の繊維消化率はメン羊より低い。 一方,この増体時期において増体量に応じたTDN給与量の推定が可能である。

  • 担当:東北農業試験場・草地部・飼料調製研究室
  • 連絡先:019-643-3564
  • 部会名:飼料利用
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

山野に自然生息するニホンジカの畜産的な利・活用を図るには,適正な個体密度管理方法や人工的な飼育施設・環境における繁殖・飼養技術の確立が前提となる。このためにはニホンジカの各ライフサイクルにおける基礎的知見の集積が必要であり,ここでは舎飼い飼養下でのニホンジカの各種飼料の利用性・消化特性を究明するとともに,成長期における増体に要する養分要求量を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 成長期(体重:25~40kg(雄),40~50kg(去勢),10~30ヶ月齢)のニホンジカ6頭を供試し,3頭ずつの群飼条件下(A,B,C群)でトウモロコシサイレージ,ソルガムサイレージ,オーチャードグラス乾草,アルファルファキューブの何れかを基礎飼料とし,他に大豆粕・配合飼料・ミネラル剤を補給して飼料の種類と給与量との組合せにより,計18回の給与試験を行なった。各給与期間はそれぞれ 30~110日間で,増体量・飼料摂取量・飼料 消化率を測定し,TDN(可消化養分総量)要求量を求めた。
  • 舎飼い飼養条件下でも,ニホンジカ(成長期)の増体量・飼料摂取量は,冬の時期(12月~3月)に停滞あるいは減少する季節性が認められる(図1)。
  • ニホンジカの増体時期(春~秋)における各粗飼料の消化性では,繊維質成分(OCW)の消化率はメン羊より5~15 ポイント程低いものの,易消化性の成分(OCC)では有意差はない(表1)。
  • 体重25~50kgにおける18回の飼養試験結果から,日増体量(g/日)とTDN摂取量(g)/kg(BW0.75)/日 との間に単回帰式が得られ,成長期における維持に要するTDN量(g)は 28.2g/Kg(BW0.75)/日と推定でき,期待する増体量に応じたTDN給与量の推定が可能である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • ニホンジカの舎飼い飼養において,成長期の飼養目標として参考資料となる。
  • TDN給与量の推定は,成長期の増体時期(5月から10月まで)に限定して当てはまり,冬の時期および雌・成鹿には適用できない。なお,給与飼料中の粗タンパク質含量は12%を下まわらないものとする。

具体的データ

図1.ニホンジカの舎飼い時における体重の推移

表1.トウモロコシサイレージ・ソルガムサイレージ・オーチャードグラス乾草給与時におけるニホンジカとメン羊の飼料成分消化率とTDN含量の比較

図2.成長期のニホンジカにおけるTDN摂取量と日増体量(DG)との関係

その他

  • 研究課題名:鹿における飼料利用性の評価と給与技術の開発
  • 予算区分:大型別枠(新需要創出)
  • 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)
  • 研究担当者:久馬  忠(現,信州大農),近藤恒夫,大下友子(現,北農試),嶝野英子,村井  勝
  • 発表論文等:ニホンジカとメン羊の粗飼料の消化率と消化管通過速度の比較,第91回日本畜産学会講演要旨集,1996.