紫黒米粳の水稲新品種「おくのむらさき」

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

早生、短稈、やや大粒、多収の水稲紫黒米粳品種「おくのむらさき」を育成した。用途は、赤飯、黒粥、だんご、寿司等の着色米飯、着色酒のための醸造用原料、等が予定される。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・稲育種研究室
  • 連絡先:0187-66-2773
  • 部会名:水稲
  • 専門:育種
  • 対象:稲類
  • 分類:普及

背景・ねらい

紫黒米特性を有する品種としては「朝紫」が1996年度に命名登録されている。この「朝紫」は、着色酒(古代酒)用の原料にも用いられているが、小粒の糯種であり醸造用には適していない。このため「朝紫」で着色酒を生産している業者からは、着色酒に適した大粒の紫黒米粳品種を育成して欲しい、という要望が出されている。そこで、こうした要望に応えるため、早生、短稈、やや大粒、多収の紫黒米粳品種を目標に、育成を進める。

成果の内容・特徴

  • 「おくのむらさき」は、紫黒米糯系統の「東北糯149号」を母、短稈、多収の粳系統「奥羽311号」 (ふくひびき)を父とする組合せから育成された紫黒米粳品種で、「朝紫」と同様に葉身や籾の一部が紫色を呈し、一般品種と容易に区別のつく特徴がある。
  • 出穂期は「あきたこまち」と同程度であるが、成熟期は4日程度遅く、育成地では "早生の晩"に属する。
  • 短稈で耐倒伏性は"強"、耐冷性は"弱"、穂発芽性は"やや難"である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pi-b"を持つと推定され、葉いもちと穂いもちの穂場抵抗性は不明である。また白葉枯病に"やや弱"である。
  • 草姿は止め葉が直立し良好で、収量は「あきたこまち」より7%低いが「朝紫」より11% 高く、紫黒米としてはかなりの多収性である。
  • 玄米は、千粒重が24.3gのやや大粒で、表層は紫黒米特有の紫黒色を帯び、色素含量は「朝紫」より少ない。精米すると一般の粳品種と変わらない白米となり、その食味は "中上"である。

成果の活用面・留意点

  • 紫黒米粳特性を活かした赤飯(混米)、黒粥、だんご、寿司等の着色米飯、やや大粒特性を活かした着色酒(古代酒風)、紫黒米色素を利用した漬物(糠漬け)、染め物等に利用する。
  • 耐冷性が"弱"なので常襲地での栽培は避け、低温年の水管理に注意する。
  • いもち耐病性は、真性抵抗性遺伝子"Pi-b"をもち圃場抵抗性が不明なので、侵害菌の発生に留意し、適正防除に努める。

具体的データ

表.「おくのむらさき」の特性一覧表

 

その他

  • 研究課題名:寒冷地北部向きいもち耐病性、耐冷性、直播適応性品種の育成
  • 予算区分:新形質米・次世代稲作
  • 研究期間:平成11年度(平2~11)