汎用的で簡便な水稲の主稈葉齢予測モデル
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要約
東北の基幹品種の生育監視に適用する止葉展開期までの発育ステージを主稈葉齢で予測するモデルである。本モデルでは、主稈葉齢が1進むのに必要な10~24度Cの有効積算気温を出葉間隔とし、生育時期別に3分割して葉齢を予測する。
- 担当:東北農試・総合研究部・総合研究第4チーム
- 連絡先:019-643-3496
- 部会名:水稲
- 専門:栽培
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
水稲冷害を対象とした早期警戒システムでは、東北全域に気象情報を基とした冷害対策技術の活用および冷害時の迅速な被害診断を行うために、水稲の全発育ステージを追跡的に把握することが求められている。このため生産現場で水稲の発育ステージの指標として利用される葉齢に着目して有効積算気温を使った出葉間隔に基づく簡便な葉齢予測モデルを開発する。
成果の内容・特徴
- ある日の葉齢は前日の葉齢に10~24度Cの有効積算気温(以下ΣT10,24) による伸長分が加算されたものと考え、主稈葉齢が1進むのに必要な ΣT10,24を出葉間隔と定義する。この出葉感覚の推移は表1の7品種ではほぼ同様である。出葉間隔は葉齢が移植後9.1葉までのPhaseI、9.1~11.1葉の PhaseII、11.1葉以降のPhaseIIIの3時期にわけると、PhaseIは品種、年度によらず一定の値を示し、PhaseIIの出葉間隔が増加し、PhaseIIIはほぼ一定になるものの、変動が大きい。
- 1997、1998年の葉齢調査データを用い、PhaseI、IIIの出葉間隔とPhaseIIの出葉間隔の増分(主稈葉齢が1進む間の積算気温の増分)を計算した(表1)。モデルのパラメータとして表1の7品種の両年平均を用いる。
- 作成した葉齢予測モデルを図1に示す。図1における面積がある葉齢から次の葉齢に進むまでに必要なΣT10,24を示し、開始日の葉齢とその後の日平均気温から現在の葉齢を推定する。
- 本モデルは出葉の規則性に基づくため、出葉経過が他品種と大きく異なる「おきにいり」を除く11品種については精度高く推定できる(表2)。
成果の活用面・留意点
- 活着後の葉齢からアメダス日平均気温を用いて発育ステージが追跡できる。また、主稈葉数を設定し、葉齢指数に変換すれば幼穂の発育の広域的な予測も可能である。
- 早期警戒システムにおける水稲の生育監視、障害型冷害の危険期予測、および安全作期の策定に利用する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:収量成立過程を考慮した生育予測・作柄診断モデル
- 予算区分:地域総合(早期警戒)
- 研究期間:平11年度(平8年~12年度)
- 発表論文等:水稲における葉の形成過程を考慮した発育予測手法、日作紀、
68巻別号2、62-63、1999.