水分調整した芽出し籾の直播による水稲苗立ち・初期成育の安定化

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要約

種籾の催芽期間を延長して鞘葉、種子根を伸ばした「芽出し籾」の直播によって、苗立ち・初期成育の安定化、生育促進が可能である。芽出し処理時の水分調整によって芽出しの程度を制御し、陰干しすることで効果はより安定的になる。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・上席研究官
  • 連絡先:0187-66-1221
  • 部会名:水稲
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

東北における水稲の「芽出し籾直播」は東北農試、岩手県農試等で検討され、初期成育、出穂期促進等の効果が認められたが、播種時の埋没で苗立ちが不安定になること等の問題で普及には至らなかった。そこで、芽出し籾作成法、播種前の陰干しによる籾水分調整法等について検討し、より安定的な芽出し籾直播技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 芽出し籾の利用でハト胸催芽籾直播よりも苗立ち~初期成育がよくなり、出穂も早くなる。収量水準は540kg/10aの水準である(表1)。
  • 種籾は吸水・膨化して比重が1.3以上となり、ハト胸期に最大となった。芽出し籾の比重は1.25で1日陰干し後でも変わらないので、播種作業上の問題は少ない(図1)。
  • 芽出し籾はハト胸催芽後の籾を日平均約25度C、2日間保温して作成し、その時の水分条件の調節によって芽出し籾の伸長程度を変えることができる(表1付図)。
    籾に表面水が付着した状態では芽(sprout)と根(root)が伸長する(SRと略記)。表面水を排除した状態で芽の伸長は抑制されるが根は伸び(R)、水中では芽だけが伸びる(S)。
  • SRは水分含有率が最も高く陰干し中の水分減少も緩やかであるが、Rは水分含有率が低く陰干し中の水分低下も早い(図2)。
  • 芽出し籾の伸長程度に応じた適度の陰干しによって、苗立ち~初期生育が向上する。
    苗立ち期の茎葉乾物重はSRの2~3日陰干しが最も高い。Rは水分含有率の高い方で重いが、Sでは陰干し後のSRの方が重くなる傾向を示している(図3A)。
    根の乾物重は陰干し後のSRが重い。Sの1日陰干しでは種子根を発出した固体もあり根量が増している(図3B)。

成果の活用面・留意点

  • 芽出し籾の出芽率は覆土1cmで50%以下になる。埋没しないよう播種法に注意する。
  • 植え代直後の表面播種が適している。ただし、ころび型倒伏に配慮した品種選択、水管理、施肥法等に留意する。
  • 初期成育促進にはSRの陰干しが適している。Rでは播種時の芽の損傷が殆どないこと、Sの1日陰干しでは種子根の発出が良いこと等の特長を活かして利用する。

具体的データ

表1.芽出し籾直播による生育・収量と出穂期促進の効果

 

付図:芽出し法と催芽程度

 

図1.芽出し籾作成過程における性体重、体積および比重の変化

 

図2.芽出し籾作成後~陰干し後の水分含有率の変化

 

図3.播種時の芽出し籾水分含有率と苗立ち期の茎葉(A)、根(B)の乾物重との関係

 

その他

  • 研究課題名:寒冷地における直播水稲の生育収量安定化技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平成9~11年)
  • 発表論文等:水稲催芽籾の利用による直播栽培の安定化. 日作東北支部報. 42. 11-12. 1999.