pH6.2のリン酸緩衝液抽出による水田土壌の可給態ケイ酸の簡易評価法

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要約

pH6.2のリン酸緩衝液を使用する抽出法により、黒ボク土を除く水田土壌の可給態ケイ酸を評価できる。この方法は、従来の評価法である酢酸緩衝液法と異なり、ケイ酸質資材の施用による過大評価の問題が無く、より正確な評価が可能である。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田土壌管理研究室
  • 連絡先:0187-66-2775
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

これまで、土壌の可給態ケイ酸の評価には、酢酸緩衝液抽出法が広く使用されてきた。しかし、この方法では、ケイ酸質資材が施用された土壌に対して正確な評価ができず、土壌管理上の大きな問題となっている。そこで新しい評価法として、湛水保温静置法、逐次上澄液法、土壌溶液測定法、易溶出ケイ酸測定法等が提案されたが、どの方法も一長一短があって、これまでのところ広く普及していない。そこで、土壌によるケイ酸吸着がリン酸吸着と競合関係にあることを応用し、土壌固相に吸着保持されているケイ酸をリン酸緩衝液で置換し抽出する簡便で正確な可給態計ケイ酸の評価法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 風乾土5gにリン酸ナトリウム緩衝液(40mM、pH6.2)50mLを添加し、5分間振とう後、 40度Cで24時間静置し、再度5分間振とう後、ろ別し、溶液中のケイ酸を比色法等で測定する。
  • ケイ酸資材が施用された土壌の場合、酢酸緩衝液法では可給態ケイ酸量が過大評価されたが、本法では過大評価されず、水稲のケイ酸吸収量と高い相関を示した(図1)。
  • 山形県下の水田土壌151点について検討したところ、本法で抽出されたケイ酸量は、成熟期の水稲茎葉のケイ酸濃度と正の相関を示した(図2)。この相関は、灰色低地土、グライ土、強グライ土、褐色低地土では高かったが、黒ボク土では認められなかった。

成果の活用面・留意点

  • 黒ボク土については、正確な評価ができない(図2)
  • 抽出されたケイ酸の比色定量に際しては、共存する多量のリン酸による妨害を避けるため、モリブデン酸と酒石酸の添加量を、それぞれ従来法(土壌環境分析法、 p.276、住田の方法)の2.5、3.75倍に増量する必要がある。

具体的データ

図1.ケイ酸資材の施用歴が可給態ケイ酸の評価値に及ぼす影響

 

図2.現地圃場における水稲茎葉のケイ酸濃度とケイ酸抽出量との関係

 

その他

  • 研究課題名:土壌の可給態ケイ酸の評価法の開発-リン酸緩衝液抽出法の検討
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平成9年~11年)
    • Evaluation of silicon availability in paddy soils by an extraction using a phosphate buffer solution, 16th world congress of soil science, Summaries Vol.1, P.266, 1998
    • 土壌の可給態ケイ酸の簡易評価法の開発、土肥講要、 45、P.186、1999