イネ系統「中部32号」の葉いもち圃場抵抗性の遺伝解析

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要約

イネ系統「中部32号」の葉いもち圃場抵抗性には、作用力の強い1個の優性遺伝子が関与している。その遺伝子は第11染色体のDNAマーカーC1172近傍に座乗している。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田病虫害研究室
  • 連絡先:0187-66-2772
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

農薬使用量軽減のため、イネのいもち病抵抗性品種の作出が強く望まれている。特にいもち病圃場抵抗性は、一般に複数の遺伝子に支配される量的形質であるため、抵抗性の崩壊の危険性が少ない。しかし、本圃場抵抗性に関与する遺伝子については未解明の点が多い。そこで、強圃場抵抗性を有するイネ系統「中部32号」の葉いもち圃場抵抗性遺伝子について、QTL(Quantitive Trait Loci:量的形質遺伝子座)解析を行い、その数や染色体上の位置を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「中部32号」と圃場抵抗性弱の「農林29号」のF3系統の葉いもち圃場抵抗性を畑苗代で検定した結果、抵抗性強と弱が3:1の有意な比率に分離した(図1、表1)。
  • このことから、本圃場抵抗性の発現に関与する遺伝子のなかには、作用力の強い 1個の優性遺伝子が存在する。
  • この作用力の強い遺伝子は、第11染色体上のマーカーC1172を中心とした領域に座乗している(図2)。また、圃場抵抗性に関する全表現型分散に占める、このQTLの表現型分散の割合(寄与率)は58%である。

成果の活用面・留意点

  • 解析したQTLの情報を利用して、物理地図を作成することにより、圃場抵抗性遺伝子の単離が可能となる。

具体的データ

図1.農林29号/中部32号のF3系統における葉いもち圃場抵抗性の分離(畑苗代検定)

 

表1.農林29号/中部32号のF3系統における葉いもち圃場抵抗性の分離

 

図2.農林29号/中部32号のF3系統から作成した連鎖地図と葉いもち圃場抵抗性に関与するQTLの位置

 

その他

  • 研究課題名:イネいもち病圃場抵抗性遺伝子の単離とその機能解明
  • 予算区分:連携開発(イネゲノム)
  • 研究期間:平成11年度(平成10~12年)
  • 発表論文等:
    • イネ系統中部32号の葉いもち圃場抵抗性の遺伝分析、日植病報64(4)、364(講要)、1998.
    • イネの葉いもち圃場抵抗性のQTL解析、日植病報、65(3)、350(講要)、1999.