水田地温によってタイヌビエ防除に必要な除草剤残効期間を推定する方法

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要約

タイヌビエの各葉令と発生終期に達するまでの日数は、それぞれ水田の地温平均値と日最高地温平均値の回帰式によって推定できる。それらの日数の差はタイヌビエ防除に必要な除草剤残効期間の推定値となる。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:0187-66-2771
  • 部会名:水稲
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

寒冷地の水田では雑草の発生が不斉一であることや水稲の初期成育が緩慢なことから、他の地域に比べて除草剤の使用回数が多く、除草剤使用量も多くなる傾向がある。そこで本研究では、寒冷地の適正な除草剤使用回数・使用量を推定するため、寒冷地水稲作の最大の強害雑草であるタイヌビエの葉令進度と発生終期を推定する方法を検討し、タイヌビエ防除に必要な除草剤残効期間の推定モデルを作成する。

成果の内容・特徴

  • 水田土壌表面から1cm以内の地点の表面地温を毎正時に測定し、代かき日からの平均値(地温平均値)と日最高値の平均値(日最高地温平均値)とからタイヌビエ防除に必要な除草剤残効期間を推定するモデルを作成した。
  • 各葉令に達するまでの代かき日からの日数(DL)は、その期間の地温平均値(TA)により、1/DL=aTA+b(a,bは係数)の式で回帰できる(図1、表1)。従ってDL=1/(aTA+b)となる。
  • 発生終期に達するまでの代かき日からの日数(DE)は、その期間の日最高地温平均値(TM)により、log(1/DE)=aTM+b(a,bは係数)の式で回帰できる(図2、表2)。従ってDE=1/EXP(aTM+b)となる。
  • 任意の葉令に達してから発生終期に達するまでの日数がDE-DLによって計算され、この値がタイヌビエ防除に必要な除草剤残効期間の推定値となる(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 東北地域における除草剤適正使用量の指標策定に向けての基礎的知見となる。
  • タイヌビエの生態的特性が大きく異なる水田の場合には、そのタイヌビエに対応する係数を作成して推定する。
  • 回帰式の策定に使用した水田地温の範囲と温度条件が大きく異なる地域への適用には、水田地温以外の要因についても検討する必要がある。
  • 落水を頻繁に行う水田では、タイヌビエの発生消長が異なることが予想されるため、そうした水田には適用しない。

具体的データ

図1.地温平均値による3葉期の推定表1.タイヌビエの葉令進度に関する回帰式

 

図2.日最高地温平均値による95%発生終期の推定

 

表2.タイヌビエの発生終期に関する回帰式

 

図3.タイヌビエ防除に必要な除草剤残効期間と葉令進度・発生消長との関係

その他

  • 研究課題名:寒冷地水稲作における雑草の発生生態・生育予測と要防除水準による
                    除草剤低減化技術の開発
  • 予算区分:特研「水田雑草制御」(平成7~9年)、場特定(平成11年)、経常
  • 研究期間:平成11年度(平成7~11年)
  • 発表論文等:
    • 積雪寒冷地の低温潅漑とタイヌビエの発生消長との関係、寒冷地における水田雑草防除の現状と問題点(平成8年東北地域水稲栽培研究会報告書)、東北農業試験場、1997.
    • 寒冷地におけるタイヌビエの葉令進度・発生消長と田面水温との関連性、雑草研究41巻別号1、56~57、1996.
    • 東北地域における水田地温とタイヌビエの葉令進度・発生終期との関係について、雑草研究45巻別号、60-61、2000.