スルホニルウレア抵抗性アゼトウガラシ属水田雑草におけるALS遺伝子の変異部位

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要約

スルホニルウレア系除草剤抵抗性アゼトウガラシ属水田雑草では、除草剤の作用点となるアセト乳酸合成酵素(ALS)の遺伝子が変異して、ALSのドメインAのプロリンが別のアミノ酸に置換されており、これによりALSの除草剤感受性が低下している。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:0187-66-2771
  • 部会名:水稲
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年問題となっているスルホニルウレア系除草剤(SU)抵抗性の発現機構を解明し、雑草の抵抗性変異の発現に関する基礎的知見を得るため、4種類のアゼトウガラシ属水田雑草において、SU剤の作用点として知られるアセト乳酸合成酵素(ALS)の除草剤感受性を調べるとともにALS遺伝子を部分的に単離し、抵抗性生物型における遺伝子変異を調べる。

成果の内容・特徴

  • SU抵抗性のアゼトウガラシ、アゼナ、アメリカアゼナ、タケトアゼナの4種類のアゼトウガラシ属水田雑草のALSは、SU感受性のものと比較すると、スルホニルウレア系除草剤のチフェンスルフロンメチル対する感受性が低い(図1)。
  • 4種類のSU抵抗性アゼトウガラシ属水田雑草のALS遺伝子は、ドメインAのプロリンにあたる塩基配列が変異しているため、プロリンが別のアミノ酸に置換されている(表1)。
  • ALSのドメインAのプロリンの置換はSU感受性を低下させることが知られており(Lee, et al. 1998 EMBO J.7:1241-1248;Haughn,et al. 1998 Mol. Gen. Genet 211: 266-271)、アゼトウガラシ属水田雑草のALSのSU感受性も低下していることから、抵抗性はこのALS遺伝子の変異が原因であると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 除草剤抵抗性の出現機構の研究における基礎的知見となる。
  • SU抵抗性は遺伝子のわずかな変異によって引き起こされるので、同一除草剤の連用を避けるなどの予防対策を行って、今後の新たな出現を防止することが重要となる。
  • 成果によって明らかになったプロリンから置換されたアミノ酸は、他のアミノ酸に置換された場合でも抵抗性を引き起こすと考えられ、植物種によって決定されているわけではないことに注意する。

具体的データ

図1.アゼトウガラシ属水田雑草の感受性生物型(○)と抵抗性生物型(●)におけるALS活性のチフェンスルフロンメチルに対する反応の比較

 

表1.アゼトウガラシ属水田雑草の感受性生物型(S)と抵抗性生物型(R)のALS遺伝子のDNA配列から推測されるドメインAのアミノ酸配列の比較

 

 

その他

  • 研究課題名:スルホニルウレア系除草剤抵抗性の発現機構の解明およびその 簡易検定方法の開発
  • 予算区分:先端技術開発研究「雑草防除」
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年)
  • 発表論文等:
    • スルホニルウレア系除草剤抵抗性アゼトウガラシ属水田雑草のアセト乳酸合成酵素遺伝子の変異、雑草研究44巻別号、80~81、1999.
    • 水田におけるアメリカアゼナの繁茂とSU抵抗性、東北雑草研究会99要旨集、33~34、1999.