イネいもち病の被害度を判別するスペクトル指標

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

葉いもちはR550/R675(550nmと675nmの反射率の比)、穂いもちは糊熟期ではR570/R675、黄熟期ではR550/R970のバンド比でそれぞれ被害度を判別できる。また、これらの波長を含む衛星、航空機センサで被害の甚大なものは判別できる可能性がある。

  • 担当:東北農試・総合研究部・総合研究第4チーム福島県農業試験場・病理昆虫部
  • 連絡先:019-643-3496
  • 部会名:生産環境
  • 専門:病害
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

病害分野において、リモートセンシング技術は広範囲にわたる被害評価、発生予察、発病程度の定量化および圃場の定点調査、巡回調査の効率化に貢献することが期待されている。地上における近接リモートセンシングにより、葉いもち及び穂いもちの感染によって反射率が特異的に変化する波長域を明らかにして被害度を判別するスペクトル指標を作成する。また、人工衛星および航空機多波長域走査センサにおけるこれらの指標の有効性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 葉いもち罹病イネでは、可視域の680nm付近で発病程度が大きいほど反射率が高く、反対に近赤外域の800nm付近で低い(図1)。健全イネの反射率を基準にすると、495、675nm付近の可視域で感染による変化が大きい。バンド比R550/R675(550nmと675nmの反射率の比)を用いると、発病程度0、1~5、7、9~10の4段階の葉いもち被害度を判別できる(図2)。
  • 穂いもち感染による反射率の変化は、糊熟期では485、675nm付近、黄熟期では470nm、近赤外域(700-1,300nm)で大きい。穂いもちの被害度を判別するバンド比は生育ステージにより異なり、糊熟期ではバンド比R570/R675で罹病籾率 3.7~16%、41~52%、79%を、黄熟期では近赤外域を用いたバンド比R550/R970で罹病籾率6%、19%、53%、85%をそれぞれ判別できる(図2)。
  • 5つの衛星センサと1つの航空機多波長域走査センサで、発病程度7以上の葉いもち被害度を、また穂いもちでは糊熟期に被害籾率3.7~16%、41%、52~79%を判別できる可能性が示唆される(表1)。

成果の活用面・留意点

  • これらのスペクトル指標は、室内と屋外計測及びポットのイネと圃場のイネ群落、全ての条件下で共通して導き出されたものである。
  • イネいもち病の被害度計測用センサ開発の基礎となる。
  • 人工衛星および航空機センサデータを用いて、広域的にイネいもち病の被害程度を診断する際に参考となる。

具体的データ

図1.葉いもち罹病イネの分光反射特性

 

図2.いもち病の被害度とバンド比の関係

 

表1.葉いもちおよび穂いもち(糊熟期)の被害計測に有効と見られる航空機・衛星センサのバンド比

 

その他

  • 研究課題名:リモートセンシングによる稲作環境と水稲環生育情報の収集と 広域的診断技術
  • 予算区分 :地域総合(早期警戒)
  • 研究期間 :平成11年度(平成8~12年)
  • 発表論文等:日本植物病理学会報、62巻、P272、1996
                     日本作物学会紀事、66巻(別2号)、P62-63、1997
                     日本植物病理学会報、64巻、P328、1998