水稲複粒化種子の造粒法

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要約

水稲催芽種子を粘土ひもの表面全体に付着させ、これを溝板で挟み、溝板を加圧・往復動させて造粒する。粘土ひも直径4.2mm、溝幅8.5mmの場合、造粒された複粒化種子に含まれる種籾数は7.2個、形状は長径9.8mm、短径7.4mmの楕円球である。

  • 担当:東北農業試験場 水田利用部 水田作業技術研究室
  • 連絡先:019-643-3535
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

コシヒカリ等良食味品種に適応した直播栽培技術として、移植栽培に近い点播方式の確立が農家側から期待されている。そこで、数粒の水稲種子をペレット状に成形した複粒化種子の製造方法を開発する。高精度な複粒化種子が有すべき主な条件は、(1)1個の複粒化種子に6~8粒の種籾が安定的に含まれること、(2)形状はできるだけ小さく、かつ、球状であること、(3)播種機に対応できる適度な硬度を有していること、の3点が挙げられる。

成果の内容・特徴

  • 複粒化種子の造粒工程は以下の通り(図1、 図2)。
    • 市販の陶芸用粘土をシーリングガンを用いて枠内にひも状に押し出す。
    • 粘土ひも上に催芽種子をばらまく。
    • 粘土ひもを転動させて種子をひもの表面全体にむらなく付着させる。
    • 網板を用いて余分な種籾を除き、粘土ひもを下側溝板に移し替える。
    • 上側溝板を手動で加圧しながら往復動させ、粘土ひもを溝で切断しながら球形の複粒化種子に成形する。なお、上・下溝板の隣接する溝の深さが異なるために複粒化種子は効率よく切離される。
  • 1個の複粒化種子に含まれる種籾数は平均7.2±1.3粒である。複粒化種子の形状は長径9.8±1.1mm、短径7.4±0.9mmの楕円球となる(表1)。
  • 複粒化種子を過酸化石灰資材(カルパー)で乾籾の1.25倍被覆し、陰干し後、含水率15.8%wbで静的な圧砕加重を加えたときの破砕強度は18.5Nで、播種機(傾斜ベルト式播種機)への適応性として十分な強度と判断される(表1)。
  • 1回450粒の造粒時間は約5分間(粘土調製とカルパー被覆工程を除く)で、造粒能率は 2人組作業で5000粒/h程度(条間30cm、株間16cmで2.5a分)である(表2)。
  • 通常の単粒種子との比較では、本方式の造粒(籾への障害等)による複粒化種子の発芽率の低下はない(表3)。 

 

成果の活用面・留意点

  • 高精度な複粒化種子造粒方法として、特に寒冷地での安定した直播栽培技術開発研究に活用できる。
  • 本造粒法は、複粒化種子による直播栽培技術を実用化するための基礎技術であり、造粒工程の自動化により造粒能率を大幅に向上させることができる。
  • 粘土は、市販の陶芸用粘土に加水(含水率22%→24%wb)し、混捏して使用する。粘土の使用量は10a分(約2万粒分)で5kg、価格は550円である。

具体的データ

図1.水稲種籾の粘土ひも付着工程

 

図2.粘土ひもの切断・造粒行程

 

表1.複粒化種子の物理性 表2.造粒工程別所要時間(450粒)

 

 

表3.複粒化種子と単粒種子との出芽率比較

その他

  • 研究課題名:複粒化種子を核とした寒冷地向け直播稲作経営システムの確立
  • 予算区分:地域先導技術総合研究
  • 研究期間:平成11年度(平成10~12年度
  • 発表論文等:
    水稲複粒化種子の造粒・把手技術の開発(第2報)-粘土ひも切断式造粒法の開発と播種試験、農業機械学会東北支部報(No46)、p23-28 造粒方法及び装置(特願平11-170830)、1999