小麦種子の胚乳断面色測定による胚乳粉色の簡易評価法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

小麦種子の胚乳断面色を微小分光色差計で測定することにより、ふすまが混入しない胚乳粉色を評価することができる。また、半粒で測定できるため、初期世代の胚乳粉色による個体選抜が可能である。

  • 担当:東北農業試験場・作物開発部・品質評価研究室
  • 連絡先:019-643-3513
  • 部会名:流通加工
  • 専門:食品品質
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

小麦粉の色は原料小麦粒の胚乳色とふすまの混入程度の2つの要因に影響される。粉色の選抜の効率化を図るためには、これらの要因を別々に評価する必要があるが、製粉時のふすまの混入の影響を除くことは不可能であり、これまで小麦の胚乳色を簡易に測定する方法はなかった。そこで、歯科などで利用されている微小面分光色差計を用いて、小麦粒の胚乳断面の色調を測定することにより、小麦の胚乳色を簡易に評価する方法を確立する。

成果の内容・特徴

  • 小麦粒をカッターナイフで半分に切り、胚を含まない半粒を約2mmの厚さに輪切りにした後、蒸留水が浸透しやすいように外周の皮を除去し、殻粒の中央に近い方の断面を測定面とする(図1)。
  • 乾燥時の胚乳断面のL*(明るさ)は、硝子率の高いものほど低くなる傾向があるので、試料を室温で蒸留水に浸漬して、硝子率の影響を除く。 L*は浸漬時間が長くなるに伴って増加し、4時間後に安定するため、試料の浸漬時間は4時間が適当である(図2)。
  • 胚乳断面のa*(+:赤み、-:緑み)、b*(+:黄色み、-:青み)については、蒸留水への浸漬時間による変化はみられないので、浸漬後の試料は、微小面分光色差計を用い、測定径0.2mmで、L*、a*、 b*を測定する。
  • 種子の背軸側で測定した場合、縦溝が深い品種では、深く切れ込んだ皮部の影響を受け、測定値が安定しないため、種子の向軸側の位置(図1)を測定位置とする。
  • この方法で測定した胚乳断面色と、胚乳粉(小麦粒から胚乳のみを取り出して、ガラスの乳鉢で粉砕し、100メッシュのふるいに通した粉)の色の間には、、L*、a*、b*のいずれにおいても高い相関関係があり、胚乳断面色を測定することにより、ふすまの影響のない胚乳断面色を推定することができる(図3)。
  • 選抜に用いる場合、種子の半粒で測定でき、試料の調製時に残った胚側の半粒を播種することにより、次世代を得ることができるのでF2世代からの個体選抜が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 胚乳粉とブラベンダー製粉機で製粉して得られたA粉(ふるいから先に落ちた低灰分粉で従来の粉色の評価はこれを用いている)の明るさの違いは品種により異なっており(図4)、胚乳粉色による評価は必要であると考えられる。
  • 製粉する必要がないので少量のサンプルでも測定できる。

具体的データ

図1.胚乳断面測定の試料調製手順

 

図2.浸漬時間と胚乳断面のL値との関係

 

図3.胚乳断面色と胚乳粉色との関係

 

図4.東北農試酸14品種およびASWの胚乳粉およびA粉の明るさ

 

その他

  • 研究課題名:粉色の選抜手法の開発と遺伝様式の解明
  • 予算区分:新用途畑作物
  • 研究期間:平成11年度(平成8~9年度)
  • 発表論文等:コムギ1粒の胚乳断面色測定による粉色の評価法の開発. 種学雑誌1巻3号、149-156、1999.