ダイズわい化ウイルス(SbDV)4系統の全塩基配列の決定と比較

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要約

病徴型およびアブラムシ媒介性により類別されるSbDV4系統の全塩基配列を決定した。いずれも5つの翻訳領域(ORF)を有し、塩基配列の相同性は同じ病徴型の系統間で高いが、ORF5の5'末端領域にアブラムシ媒介性との相関が認められる。

  • 担当:東北農業試験場 地域基盤研究部 病害生態研究室 作物開発部 上席研究官室
  • 連絡先:019-643-3465 019-643-3524
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害 バイテク
  • 対象:だいず ウイルス
  • 分類:研究

背景・ねらい

ダイズわい化病は北日本におけるダイズ生産に最も深刻な被害を与えており、本病抵抗性品種の早急な育成が望まれている。その病原であるSbDVは、病徴型とアブラムシ媒介性の違いにより、ジャガイモヒゲナガアブラムシで媒介される黄化系統(YS)とわい化系統(DS)、及びエンドウヒゲナガアブラムシで媒介される黄化系統(YP)とわい化系統(DP)の4系統に類別されている。したがって、抵抗性品種の育成、利用による本病防除を効率的に進めるためには、病徴型およびアブラムシ媒介性に関与する遺伝子領域を明らかにするとともに、遺伝子診断によりこれら各SbDV系統の発生状況を的確に把握する必要がある。

 

成果の内容・特徴

  • SbDVのゲノムRNAの大きさは、YS(分離株M93-1)が5853塩基、YP(同M94-1)が 5841塩基、DS(同HS97-8)およびDP(同M96-1)が5708塩基である(図1)。
  • 4系統すべてのゲノムRNAが5つの翻訳領域(ORF)を持つ(図1)。なお、ORF1およびORF2は複製関連タンパク質、 ORF3は外被タンパク質、ORF4は師部細胞間移行に関連するタンパク質をコードしていると考えられている。また、ORF5はORF3の終止コドンのリードスルーにより翻訳され、その産物はアブラムシ媒介性に関与すると考えられている。
  • 塩基配列から推定されるアミノ酸配列の相同性は、すべてのORFにおいて、同じ病徴型を示す系統間で高く(表1)、YSとYPおよび DSとDPがそれぞれ極めて近縁であると考えられる。
  • 一方、ORF5の5'末端領域では、同じアブラムシ媒介性を示す系統間で塩基配列および推定アミノ酸配列の相同性が高い(表2)。このことから、この領域がアブラムシ媒介特異性に関与している可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • 本塩基配列をもとにプライマーを設計し、RT-PCR法によって感染植物からSbDVを検出できるほか、病徴型およびアブラムシ媒介性の判定が期待される。

具体的データ

図1.

 

表1.

 

表2.

その他

  • 研究課題名:ゲノム構造の比較におけるダイズわい化ウイルスの病原性分化の解析
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成10~12年度)
  • 研究課題名:豆類のウイルス病抵抗性付与技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成11~14年度)
  • 発表論文等:
    Comparison of the genomes of three strains(YS,YP and DP) of soybean dwarfluteovirus. Phytopathology, 89:S77. 1999.
    ダイズわい化ウイルス(SbDV)DS系統の全塩基配列.日本植物病理学会報、65:669-670. 1999.