セイヨウコナガチビアメバチの放飼によるコナガ密度抑制効果

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要約

コナガの発生初期に夏穫りキャベツ、ブロッコリーに、セイヨウコナガチビアメバチ雌成虫を2~3回、合計で株当たり1頭放飼することにより、発生ピーク時における幼虫・蛹密度を無放飼区の3分の1以下に抑えることが可能である。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・害虫発生予察研究室
  • 連絡先:019-643-3466
  • 部会名:生産環境(病害虫)
  • 専門:作物虫害
  • 対象:葉菜類・花菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

コナガは殺虫剤抵抗性を高度に発達させているため、東北地方においても殺虫剤による防除が困難になっている。しかし、近年の環境保全への関心の高まりによって殺虫剤の使用は減らすことが求められている。そこで薬剤防除に代わるコナガの生物的防除法を確立するため、海外から導入したコナガの有力な寄生蜂であるセイヨウコナガチビアメバチを野外放飼し、東北地方のアブラナ科野菜におけるコナガ密度抑制能力を評価した。

 

成果の内容・特徴

  • 盛岡市において第1世代のコナガ3齢幼虫が増加し始める6月上~中旬に、交尾させたセイヨウコナガチビアメバチ雌成虫を株当たり1頭放飼することにより、夏穫りキャベツおよびブロッコリーのコナガ幼虫・蛹密度を、夏期の密度最大期において無放飼対照区の3分の1以下に抑制できる (図1、 図2、 表1)。
  • 1996年に初めて蜂を野外放飼し、1997年には放飼を行わなかったにも関わらず、 1997年に圃場で本種の寄生が確認されたことから、本種は盛岡市の気候下で越冬可能であることが示唆される。本種は外来種であるが、コナガ以外に寄主がいないこと、高温条件(25度C以上)に弱く盛夏には土着寄生蜂との競争に負けることにより、定着しても存在生態系への影響は軽微であると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 本寄生蜂は現在のところ、一部の試験場、大学で実験用に飼育されているのみであり、防除に本格的に利用するためには、増殖施設と供給体制の整備が必要である。
  • セイヨウコナガチビアメバチは幼虫寄生蜂であるため、放飼時の世代のコナガ密度は抑えられない。したがって、発生初期に放飼して次世代以降のコナガ密度を抑制する形で使用する必要がある。
  • 本寄生蜂はコナガにしか寄生しないので、他の害虫の防除手段を別途講じる必要がある。また、25度C以上の高温条件下では寄生率、生存率が低下するので注意する。

具体的データ

図1.寄生蜂放飼によるコナガの密度抑制効果

 

図2.放飼区と無放飼区におけるセイヨウコナガチビアメバチの寄生率

 

表1.調査期間中の気温データ

 

その他

  • 研究課題名:コナガの寄生蜂の利用を核としたキャベツ害虫群の総合防除技術
  • 予算区分 :環境研究(持続的農業)
  • 研究課題名:アブラナ科野菜害虫コナガの防除技術の確立
  • 予算区分 :実用化促進(地域総合)
  • 発表論文等:
    Effect of inoculative release of Diadegma semiclausum(Hellen) on diamondback moth PluTella xylosTella(L.) in Iwate,northern Japan. (投稿中)