トウモロコシ圃場における土壌中のイチビ種子の垂直分布と実生の発生

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要約

飼料用トウモロコシ圃場におけるイチビの出芽数と土壌中のイチビ種子密度は比例する。土中種子の垂直分布は作土層の範囲で均等であるが、出芽した実生の大部分は浅い土層の種子から発生し、発芽しなかった種子は土壌中に生存したまま残存する。

  • 担当:東北農業試験場 草地部 飼料作物研究室
  • 連絡先:019-643-3563
  • 部会名:畜産(草地)
  • 専門:栽培
  • 対象:飼料作物類
  • 分類:指導

背景・ねらい

イチビ(Abutilon theophrasti Medic.)の防除を難しくしている要因の一つに、種子に休眠性があり土壌中で埋土種子として長期間(20年以上)生存可能であることがあげられる。飼料用トウモロコシ圃場におけるイチビの発生様相を明らかにし、防除の基礎データとするため、数年前からイチビが発生している圃場の土壌中のイチビ種子の状態とその種子からのイチビの出芽について検討する。

 

成果の内容・特徴

  • イチビの出芽数と埋土種子密度は比例し、作土層cに存在した種子の約15%が出芽する(図1、 表1-出芽後(1)・(2))。
  • イチビが結実し種子の落下が数年間続いたトウモロコシ圃場では、土壌中のイチビ種子は耕起作業により作土層でほぼ均等に分布する (表1-出芽前)。
  • イチビの実生の出芽は大部分(94%)が深さ6cmより浅い土層から出芽し、12cmより深い土層からは出芽しない(図2)。
  • 地表面から深さ10~20cm、20~30cmの層の埋土種子の分布割合は出芽前後で大きくは変わらないが、10cmより浅い層の埋土種子は減少し、その減少分は出芽した実生の数にほぼ一致する(表1)。
  • 土中から取り出した種子は休眠打破処理(65度C熱水15分浸漬)を行うと 9割近くが発芽した。よってイチビの発生している圃場においては、出芽した実生数の5倍以上の種子が土壌中に存在し、発芽能力を保ったまま残存する (表1-出芽後(2))。

成果の活用面・留意点

  • イチビの防除における、侵入初期の防除の重要性を指導する際の指針とする。
  • 出芽深度は土壌等の条件により異なる可能性がある。

具体的データ

図1.イチビ実生の出芽密度と作土層に残存する埋土種子の密度、図2.イチビ実生の出芽深度の分布

 

表1.イチビ実生出芽前後の埋土種子の垂直分布と実生の発生割合

 

その他

  • 研究課題名:飼料畑における強害植物の蔓延防止技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年(平成5~(8)~13年)
  • 発表論文等:
    「イチビ(Abutilon theophrasti Medic.)の実生と埋土種子集団」 日本草地学会誌、第43巻別号、12~13、1997