豚精漿は10度Cでの豚精液保存に有効である

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要約

豚射出精子を5%~25%の豚精漿を含む精液保存液(モデナ)を用いて、 10度Cで保存すると、保存精子は28日間運動性を維持することができる。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・家畜繁殖研究室
  • 連絡先:019-643-3542
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:繁殖
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

わが国の豚の人工授精普及率は3.5%と極めて低い。その原因として、人工授精による低受胎率が考えられる。現在、人工授精に用いる豚精液の液状保存には原精液を保存液で希釈して用いているが、保存液中の精漿の影響については知られていない。そこで本研究は、高い受胎率が望める精液保存方法を確立することを目的に、精液保存時の精漿が保存後の精子の生存性及び運動性に及ぼす影響について検討する。

 

成果の内容・特徴

供試精液としてはランドレース種雄豚A及びBの濃厚部精液を、保存液としては モデナを用いた。保存液中の精漿の濃度を0~75%とし、 希釈精液(1 X 108 精子/ml)を10度Cで遮光保存した。 保存精子の運動性はHamilton-Thorne Research Motility Analyzerを用いて 分析した。5μm/sec以上の速度を有する精子の割合を運動精子率、 その内平均細胞パス速度/直線速度が80%を越える精子の割合を直進運動精子率 として示した。また、原精液をモデナで常法通り5倍希釈したものを対照区とした。

  • 図1、3に示すように、運動精子率は、0%区では保存1日目以降、1%区では保存14日目以降、 75%区では、種雄豚Aで保存14日目以降、種雄豚Bで保存7日目以降に対照区に比べて有意に低下した。
  • 図2、4に示すように、直進運動精子率は、0%区では保存1日目以降に、1%区では、種雄豚 Aで保存14日目以降、種雄豚Bで保存28日目に、75%区では、種雄豚Aで保存 14日目以降、種雄豚Bで保存21日目以降に対照区比べて有意に低下した。
  • 5%~25%区の運動精子率及び直進運動精子率の値には全保存期間を通して、対照区と差は認められなかった。以上の結果から、保存液中への精漿添加は保存精子の運動性保持に有用であること、さらに、その濃度範囲は5~25%であることが示された。

成果の活用面・留意点

豚精液の液状保存技術の実用化への基礎的知見として利用する。

具体的データ

図1.保存液中の精漿濃度が10°C保存後の精子の運動性に及ぼす影響、図2.保存液中の精漿濃度が10°C保存後の精子の直進運動性に及ぼす影響

 

図3.保存液中の精漿濃度が10°C保存後の精子の運動性に及ぼす影響

 

図4.保存液中の精漿濃度が10°C保存後の精子の直進運動性に及ぼす影響

 

その他

  • 研究課題名:豚の精液保存に関する研究
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成11年度(平10~11年度)
  • 発表論文等:
    • 「ブタ精子の10度C保存における精漿濃度が精子の運動性に及ぼす影響」日本養豚学会報36巻P18-22
    • 「10度C保存ブタ精子の運動性および受精能の変化」日本養豚学会報 36巻P36-41
    • 「ブタ精漿中のSOD活性および保存液中へのSODの添加が精子の運動性に及ぼす影響」 36巻P42-46(1999)