育成期における黒毛和種雌牛の成長ホルモン及びインシュリン分泌機能

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要約

育成期(生後24ヶ月齢まで)における黒毛和種の成長ホルモン分泌機能はホルスタイン種に比べ有意に低く、インシュリン分泌機能は逆に高い。一方、インシュリン感受性は品種間で差が無ない。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
  • 連絡先:019-643-354
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:畜産
  • 対象:乳肉用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

育成期における子牛の発達は内分泌機能、特に成長ホルモン(GH)やインシュリン分泌機能に大きく影響される。しかし、我が国の主要な肉用牛である黒毛和種牛のこれらホルモン分泌機能に関する知見は極めて乏しいのが現状である。
そこで本研究では、育成期における黒毛和種雌牛のGH及びインシュリン分泌機能並びにインシュリン感受性をホルスタイン種雌牛と比較することにより、黒毛和種牛の発育に関与するホルモン分泌機能を明らかにすることを目的とする。

 

成果の内容・特徴

  • 血漿GH基礎値及び成長ホルモン放出因子(GRF)刺激GH分泌機能は黒毛和種の方がホルスタイン種に比べ低かった。また、GH分泌機能は両品種とも性成熟以降、低下した(表1、 図1)。
  • 黒毛和種の血漿インシュリン基礎値及びグルコース刺激インシュリン分泌機能は性成熟以降、ホルスタイン種に比べ高くなった。また、インシュリン分泌機能は両品種とも月齢に伴って増大した(表1、 図2)。
  • インシュリン感受性(インシュリン作用)は両品種とも哺乳期に比べ離乳後低下したが、品種間で大きな違いは認められなかった( 図3)。
  • これらの結果は、大型の品種であるホルスタイン種が小型の品種である黒毛和種よりも大きいGH分泌機能を持つこと、及び同化型の生産性を示す黒毛和種の方が異化型の生産性を示すホルスタイン種よりも、性成熟以降大きなインシュリン分泌を持つことを示す。

成果の活用面・留意点

育成期における黒毛和種雌牛の発育を調節するホルモン分泌機能に関する 新しい基礎知見である。

具体的データ

表1.日増体量(DG:平均値±標準誤差)

 

図1.GH分泌機能の変化

 

図2.インシュリン分泌機能の変化、図3.インシュリン感受性の変化

 

その他

  • 研究課題名:乳牛及び肉牛の発育ステージにおけるホルモン分泌機能の比較・解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成10年度(平成5年~平成10年)
  • 発表論文等:
    • ホルスタイン種及び黒毛和種雄子牛の発育ステージに伴うホルモン分泌機能の検討. 第92回日本畜産学会大会講演要旨集. p141. 1997.
    • ホルスタイン種及び黒毛和種雄子牛の発育ステージに伴うホルモン分泌機能の検討. 第94回日本畜産学会大会講演要旨集. p102. 1998.
    • 黒毛和種及びホルスタイン種雄子牛における成長ホルモン及びインシュリン分泌機能の比較. 東北畜産学会報. 第48巻1号. p7-13. 1998.
    • 6ヶ月齢以降におけるホルスタイン種及び黒毛和種雌子牛の発育ステージに伴うホルモン分泌機能の比較. 第95回日本畜産学会大会講演要旨集. p89. 1999.