アブ防除のためのボックストラップ設置場所選定基準
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要約
視覚的誘引効果だけでアブを誘引し炭酸ガスを使用しないボックストラップを適切に配置するための簡易な設置場所選定基準を作成した。この基準に基づいてトラップを設置することにより、多数のアブを捕殺できる。
- 担当:東北農試・畜産・家畜虫害研
- 連絡先:019-643-3544
- 部会名:畜産(家畜)
- 専門:飼育管理
- 対象:昆虫類
- 分類:普及
背景・ねらい
野外におけるアブ類の防除法としてはトラップによる捕殺がもっとも効果的なものである。市販の炭酸ガスを使用するトラップは、本体価格及びランニングコストが高く労力もかかるため広く普及していない。このため安価(5千円程度)に自作でき、炭酸ガスを使わずに高い捕獲能力を有するボックストラップ (図1)を開発したが、視覚的誘引効果だけでアブを誘引するため、設置場所の選定が捕殺数に大きく影響する。そのため設置場所の簡易な選定基準を作成し広く普及することを目指した。
成果の内容・特徴
- 捕獲試験及び実用現場の結果に基づきトラップ設置場所選定基準を設定した (図2)。
- 日当たりが良く、周囲に障害物がなく、広い範囲から見渡せ、背景とのコントラストが明瞭な場所:多くの種に対して有効で、ニッポンシロフアブ、フタスジアブ等の昼間、草地内で吸血活動する種類に対して特に有効 (表1)。
- 広範囲から見渡せる場所であっても、周囲より低い場所でトラップが見下ろされる場所は、トラップの背景がすべて草地になるため捕獲効率が低い (表1)。
- 林縁部:ニッポンシロフアブ等には不適だが、アオコアブ、ヤマトアブのように薄暮時や林内でも吸血活動を行う種類に対しては有効 (表1)。
- 周囲を牧柵や建物、法面など囲まれた場所はすべての種に対して不適 (表1)。
設置個数:必要設置個数は放牧地の地形によって異なり、放牧地内のどこからでも 1個のトラップが見えるように配置できる個数を目途とする。
- 山間部の放牧地において、ニッポンシロフアブを捕獲対象として上記基準で
トラップ5個を設置した結果、多数の個体を捕獲することができる
(表2)。
- 薄暗い場所を好むアオコアブ、ヤマトアブが優先する競馬場では発生源や休息場所からウマの集合する地点の間に設置することにより、この2種を効率的に捕獲できた。しかし見通しが悪く背景とのコンストラストが低いため、ニッポンシロフアブ等の捕獲数は少ない (表3)。
- 捕獲対象種に応じた設置場所選定基準に基づいて、ボックストラップを設置することにより効果的にアブを捕獲することができる。
成果の活用面・留意点
- ボックストラップは炭酸ガスを必要としないため、費用、労力をかけられない放牧地では有効な防除手段である。
- 主な捕獲対象種により設置条件が変わるため、事前に生息する種類を調べ、重点的に捕獲する種類を選定する必要がある。
- この設置場所設定基準は他のアブ用トラップにも適用できる。
- ボックストラップ作成、設置の詳細な飼料は上記連絡先及び、インターネットを利用して、http://ss.tnaes.affrc.go.jp/~sotiku/trap/index.htmlより入手できる。
具体的データ





その他
- 研究課題名:放牧牛に対する害虫の加害と被害の解析
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平成10年~14年)
- 発表論文等:ボックストラップによるアブ防除、第44回日本応用動物昆虫学会講演要旨p208,2000