寒じめ菜っぱの流通チャネル選択

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要約

寒さを利用した栽培法で生産される寒じめ菜っぱの先進産地では、商品特性を活かすため、産地と量販店が直接取引を行う流通チャネルが選択されており、有利販売を実現している。

  • 担当:東北農業試験場 総合研究第5チーム
  • 連絡先:019-643-3494
  • 部会名:東北農業・経営
  • 専門:経営
  • 対象:葉茎類
  • 分類:研究

背景・ねらい

北東北では、冬期間に無加温のハウスで菜っぱ (ホウレンソウ・コマツナ)を栽培した後、ハウスを開放して作物を寒気にあて良食味で栄養価の高い菜っぱを生産する、寒じめ栽培技術に取り組んでいる産地がある。その中で先進的に導入している3産地における寒じめ菜っぱの生産・流通各段階を調査し、流通チャネル管理論の視点から分析した。

 

成果の内容・特徴

  • 3産地とも、農協と量販店との間の値決め販売を軸にしており、卸売市場流通より流通チャネルが短く閉鎖的なチャネル選択を行っている (図1)。このことにより、産地と量販店が協調してネーミングやパーケージの工夫、店頭表示などの販売促進活動を進めており、寒じめ菜っぱの商品特性を消費者に伝達している。 (表1)。
  • この流通チャネルにおいては予め価格を設定した値決め販売を実施している。その結果、価格が低迷した平成8年冬作では、卸売市場価格より高値販売が実現しているが、価格が高騰した平成9年冬作においても市況の動きに対応して価格が引き上げられ、高価格で取引が行われている。
  • このような価格設定や、量販店への直接搬入による輸送費の低減、包装資材の節約、流通段階の減少による手数料の節約などから流通経費が削減されており、農家手取り販売額は、卸売市場に出荷した場合(推定)より多く、有利販売を実現している (図2)。
  • しかし、量販店サイドでは、寒じめ菜っぱを取り扱うことによる直接的な利益は高くなく、他店との差別化のための商品として位置づけられており、出荷量・品質の安定化を要望している。
  • 以上から、ロットの少なく特徴的な商品特性を持つ農産物の場合、産地と量販店との直接取引というチャネル選択が有効であることが示される。その際、チャネルの維持・交渉力の確保のためには産地側において、契約期間中(12月~3月上旬)一定量を安定的に出荷できるための計画的な生産・出荷体制の確立が必要である。

成果の活用面・留意点

  • 中山間産地におけるロットの小さい高付加価値農産物の流通チャネル設計を研究する際に、チャネル選択の特質に関わる情報として活用することが出来る。
  • ロットの大きさや商品の有する差別性の程度が大きく異なる場合には、チャネル選択も異なってくるため、本情報と同様のアプローチでさらに実証的な研究の蓄積をはかる必要がある。

具体的データ

図1.多様な青果物流通チャネルの特徴

 

表1.寒じめ菜っぱの流通チャネルの実態と活動状況

 

図2.寒じめ菜っぱの農家手取り販売額合計の市場出荷と値決め販売での比較

 

その他

  • 研究課題名:高付加価値野菜の販売チャネルの特質解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成9~10年)
  • 発表論文等:
    東北中山間における寒じめ菜っぱ生産とその流通チャネル選択、農業経営研究、37(1)、139-144、1999.