糯臭の弱い短稈の低アミロース米水稲新品種「シルキーパール」の育成

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

中生、短稈、低アミロース米の水稲品種「シルキーパール」を育成した。飯米は粘りが強く、糯臭が少なく、冷飯の食味が優れ、食味改善のための混米用や、低温で流通する加工用原料等の利用が予定される。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・稲育種研究室
  • 連絡先:0187-66-2773
  • 部会名:水稲
  • 専門:育種
  • 対象:稲類
  • 分類:普及

背景・ねらい

「シルキーパール」と同じく低アミロース米特性を有する品種として東北地域では「スノーパール」が平成10年度に命名登録され、近年の低アミロース米人気もあり広く普及し始めている。しかし、「スノーパール」は長稈で耐倒伏性が弱く、肥沃地には適していない。また、チルド等の低温で流通する「スノーパール」の飯米については民間の特許の枠がはめられ、その用途以外についてのみ利用が限られ、普及しにくい問題があった。このため生産者からは、「スノーパール」と異なる短強稈の低アミロース米系統育成の要望が出されている。そこで、このような要望に応えた品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「シルキーパール」は、低アミロース米系統「探系2019」(中間母本農14号)を母、短稈、早生の粳系統「ふ系143号」(ヤマウタ)を父とする組合せから育成された低アミロース米品種である。
  • 出穂期と成熟期は「ひとめぼれ」と同程度で、育成地では“中生の晩”に属する。
  • 短稈で耐倒伏性は“強”、耐冷性は“中”、穂発芽性は“中”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”を持つと推定され、圃場抵抗性は葉いもち・穂いもちともに“中”である。また白葉枯病圃場抵抗性は“中”である。
  • 草姿は止め葉が直立し良好で、収量は、「ひとめぼれ」より9%高く、「スノーパール」より4%高く、低アミロース米系統としてはかなりの多収性である。
  • 玄米は、千粒重が20.7gのやや小粒で、低アミロース米特有の白濁があり、胚芽残存は少ない。アミロース含量は登熟気温により変動し、平年は7~9%であり、高温年は低く、低温年は高くなる。こうした特性は「スノーパール」と同じである。
  • 飯米は低アミロース米特有の強い粘りがあり、冷飯でも柔らかく良食味である。糯臭は「スノーパール」より少ない。表1.特性一覧表

成果の活用面・留意点

  • 混米による食味向上の原料、冷飯で流通する加工用米飯の原料として利用する。
  • 短稈で肥沃地に適する。

具体的データ

表1.品種名:シルキーパール、組み合せ:深系2019/ふ系143号、ヤマウタ

 

その他

  • 研究課題名:寒冷地北部向きいもち耐病性、耐冷性、直播適応性品種の育成
  • 研究期間 :平成12年度(平元~12)
  • 予算区分 :新形質米・次世代稲作
  • 研究担当者:滝田 正・加藤 浩・横上晴郁・片岡知守・東 正昭・山口誠之・田村泰章・小綿寿志・
                      小山田善三・春原嘉弘