高11Sグロブリン・低アレルゲンだいず新品種「ゆめみのり」
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要約
だいず「ゆめみのり」は、放射線育種法により蛋白質組成を改変し、世界で初めて大豆の主要アレルゲンを低減させた低アレルゲン品種であり、11Sグロブリン含有率と含硫アミノ酸含有率が高い。ダイズモザイク病抵抗性が強であり、倒伏抵抗性が強く着莢位置も高いので、コンバイン収穫に適する。
- 担当:東北農試・作物開発部・大豆育種研
- 連絡先:0187-75-1043
- 部会名:作物生産
- 専門: 育種
- 対象: 豆類
- 分類: 普及
背景・ねらい
国産大豆の付加価値を高めた品種を育成するため、遺伝資源探索や放射線育種法によって大豆貯蔵蛋白質組成を改変し、栄養価の向上と、人体に対するアレルギー物質(アレルゲン)を低減させ、安全性並びに栄養性を兼備した品種の育成を図る。
成果の内容・特徴
- 「ゆめみのり」は刈系434号にγ線200Gy(農業生物資源研究所放射線育種場)を照射し、選抜・固定された品種で、平成12年における世代はM11である。
- 貯蔵蛋白質の7Sグロブリンαおよびα′サブユニットを欠失し、11Sグロブリン含有率が増大しており(表2)、人体の必須アミノ酸である含硫アミノ酸(メチオニン、シスチン)の含有率が普通大豆より約2割高い(表3)。
- 人体に対する3つの主要なアレルゲン(Gly m Bd 30K,7Sグロブリンαサブユニット、Gly m Bd 28K)のうち、7SグロブリンαサブユニットとGly m Bd 28Kが欠失した低アレルゲン大豆である(表2)。また、アレルゲンGly m Bd 30Kの物理化学的除去が、従来型大豆よりも効率的に行える(特許公開平9‐37720)。
- 成熟期は「タチユタカ」と同じ「中の晩」である(表1)。着莢位置が高く、倒伏抵抗性も強いので、コンバイン収穫に適する(表2)。また、ダイズモザイクウイルスのA,B,C,Dの各系統に抵抗性を有する。
- 子実収量は「タチユタカ」よりやや低収であり、粒の大小は「中の小」に属する(表1)。
成果の活用面・留意点
- 低アレルゲン製品(煮豆、納豆、味噌等)の原料としての利用が計画されている。
- 「ゆめみのり」から製造した分離蛋白質は、物性が通常大豆と大きく異なるため、新たな利用法の開発が期待できる。
- 低アレルゲン製品用の栽培にあたっては、他品種との自然交雑、混種を厳密に避ける必要があり、本品種単一の集団栽培を行う。
- 通常の方法では豆腐製造が困難である。
- シストセンチュウ汚染圃場での作付は避ける。
- 栽培適地は東北、北陸および関東北部地域である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:大豆新品種育成試験、大豆高11Sタンパク質品種の開発等
- 予算区分 :経常、新需要創出、交流共同研究
- 研究期間 :平成12年度(平成3年~平成12年)
- 研究担当者:島田信二、高橋浩司、島田尚典、高田吉丈、境 哲文、河野雄飛、足立大山
田渕公清、菊池彰夫、湯本節三、中村茂樹、伊藤美環子、番場宏治、岡部昭典