凝固剤の種類により豆腐中のミネラル量が変わる
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要約
大豆に豊富に含まれるミネラルの豆腐への移行過程を明らかにしたところ、豆腐製造用凝固剤の種類により、豆腐へ移行するミネラル量が異なる。よって、凝固剤の種類や配合により、豆腐に含まれるミネラル量をある程度制御できる。
- 担当:東北農試・作物開発部・品質評価研究室
- 連絡先:019-643-3513
- 部会名:食品・流通加工
- 専門: 加工技術
- 対象: 豆類
- 分類: 指導
背景・ねらい
わが国における大豆の水田本作化がスタートし、今後の生産に対応した利用加工の増大をはかるためには、国産大豆の有用特性の一層の解明が強く求められている。大豆の灰分は約5%と極めて多く、体調調節機能等の重要な役割を有する有用なミネラルや、国民栄養調査において不足が指摘されているカルシウムや鉄等も、大豆には豊富に含まれている。よって、これらのミネラルの加工プロセスにおける動態を解明することは、大豆の新しい有用性を明らかにする上で重要である。そこで、大豆中のミネラルの、豆腐の製造過程における、豆腐、おから、ゆなどへの移行の様相を解明する。また、使用する凝固剤の種類により、豆腐へのミネラルの移行が、どの程度変動するかを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 豆腐製造(図1)の初期の工程である豆乳とおからの分離に際して、おからとなるのは原料大豆乾物の27±2.2%(表1より算出)であるが、Srは原料大豆(表2)の69%、Caは約39%と高い割合でおからへ移行し、また、他の元素も10%から20%移行する。
- 最終的に原料大豆から豆腐へ移行する乾物量は40%から46%である。(表1より算出)のに対し、豆腐中へのミネラルの移行率は、使用する凝固剤(硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトン)により異なる。Mg剤を使用する場合は、豆腐中のMg量が極めて多くなる(300mg/100g、表4)他に、原料大豆から移行するFe,Zn,Mnの移行率が高い(各々48%、57%、61%、表3)。またCa剤では、豆腐中のCa量が多くなる(798mg/100g、表4)他に、P,Fe,Zn,Mnの移行率が高い(各々61%、55%、58%、62%、表3)。さらにGDL剤ではFe,Znの移行率が高い(各々59%、50%、表3)。
- 一方、凝固剤別の豆腐中のミネラル含量を比較すると(表4)、Mg豆腐ではMg,Zn,Mn,Cu,Sr,Moが、Ca豆腐ではK,P,Caが、GDL豆腐ではFeが多い。
成果の活用面・留意点
- 豆腐製造にあたり、使用する凝固剤を工夫することにより、豆腐に含まれる有用なミネラル量のある程度の制御が可能である。しかし、実際の応用に当たっては、個々の具体的な製造条件と凝固剤の配合等との関連を検討して、実施する必要がある。
- 本研究に供試した原料大豆の品種はタチユタカであり、他の品種の大豆にも同様の結果が認められるかどうかについては検討が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:大豆中の無機元素の分布と加工プロセスにおける動態解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成12年度(平成11年度~平成13年度)
- 研究担当者:森勝美、渡辺満、中村信吾、安井明美論文等
:1)安井明美、小綿美環子、中村信吾、渡辺 満:日本食品科学工学会第47回大会講演集、p.46,平成12年3月