機能性食品素材としてのソバ殻エタノール抽出物

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ソバ殻粉砕物をエタノールで還流加熱抽出することにより、フラボノイド、プロアントシアニジン等のポリフェノールが抽出可能である。抽出物は強力な抗酸化性を有する。

  • 担当:東北農業試験場・作物開発部・品質評価研究室
  • 連絡先:019-643-3513
  • 部会名: 流通・加工
  • 専門: 食品品質
  • 対象: 雑穀類
  • 分類: 研究

背景・ねらい

ソバ殻はかつて飼料、枕の充填材として利用されていたが、現在はほとんど利用されていない。製粉会社では産業廃棄物として多額の経費をかけてソバ殻を処理していることから、その有効利用法の開発が切に望まれている。当研究室ではこれまでに、ソバ殻にはルチンの他にも抗酸化物質として複数のポリフェノール化合物が含まれていることを明らかにしている。そこで、ソバ殻に含まれる抗酸化成分を生かした食品素材としての利用法を開発する。

成果の内容・特徴

  • ソバ殻の粉砕物をエタノールにより85℃で1時間、還流加熱抽出することにより、ソバ殻に含まれるルチン、イソビテキシン、ビテキシン、プロアントシアニジン等のポリフェノールが抽出可能である(図1)。
  • ソバ殻抽出物には、ソバの実抽出物の2~3倍の強力なDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル消去活性が認められる(図2)。
  • ソバ殻抽出物、及び焙煎したソバの実を添加したアイスクリームの試作品(写真1)の官能評価試験では(表1)、概ね良好な結果が得られた。

成果の活用面・留意点

  • 抽出物は同量の試料から調製した、エタノール溶液である。
  • 材料とするソバ殻により、ポリフェノール量(200~2000mg/100g)に差異があり、抽出物の色調は緑色~褐色となる。
  • 抽出物にはエタノール可溶性成分、すなわち脂質等も含まれる。
  • 本抽出物を加工食品の製造に利用する際には、天然添加物としての認可を受ける必要がある。

具体的データ

図1.ソバ殻エタノール抽出物のHPCLクロマトグラム

 

図2.ソバ殻おおよびソバの実抽出物のDPPHラジカル消去活性

 

写真.ソバ殻抽出物および焙煎ソバの実添加アイスクリーム

 

表1.試作ソバアイスクリームの官能試験結果

 

 

その他

  • 研究課題名:ソバ品種の抗酸化活性の評価および高活性ソバ製品の試作
  • 予算区分 :地域総合
  • 研究期間 :平成12年度(平成11~15年)
  • 研究担当者:渡辺 満、伊藤美雪、中村信吾、森 勝美
  • 発表論文等:Antioxidant compounds from buckwheat(Fagopyrum esculentum Moench) hulls,
                      Journal of Agricultural and Food Chemistry,45,1039-1044(1997)
                      特許出願「ソバ殻抽出物を含有する食品」特願2001-3499