おとり植物作付けに伴うアブラナ科野菜根こぶ病菌休眠胞子密度動態のモデル化

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要約

おとり植物の栽培等がアブラナ科野菜根こぶ病菌休眠胞子密度の動態に及ぼす効果を長期にわたり推定するため、休眠胞子密度動態モデル式を作成した。「初期病原菌密度」等の数値を入力すると、土壌中におけるその後の病原菌密度の変動を予測できる。

  • 担当:東北農業試験場・総合研究部・総合研究第3チーム
  • 連絡先:024-593-5937
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類: 指導

背景・ねらい

おとり植物は土壌中の根こぶ病菌休眠胞子密度を減少させる。しかし、その後作で根こぶ病罹病根をすき込むと病原菌密度が再び増加する。そのため、おとり植物作付けによる発病軽減効果を推定することが困難である。そこで、圃場の病原菌密度と発病度の関係を示す曲線(Dose Response Curve,DRC)による診断(DRC診断)の結果等を組み込んだ休眠胞子密度動態モデルを作成し、総合防除システムの確立を目的とした各種防除技術の効果的な利用法策定に際し、その防除効果を推定する(図1)。

成果の内容・特徴

  • 根こぶ病菌休眠胞子密度動態モデルは、①「ある時点の圃場病原菌密度」、②「おとり植物による病原菌密度低減率」、および③「根こぶ病罹病根すき込みによる菌密度の増加量」を示す各コンポーネントからなる。
    モデル式:Xt+1=A×Xt+D+P
    (ここで、Xt: t 時点の休眠胞子密度、D:次の時点までにおとり植物によって減少する休眠胞子密度、P:根こぶ病罹病根のすき込みにより投入される休眠胞子密度、A:自然減少率に関する係数)
  • モデル式右辺各項の数値のうち、①の初期値X0は東京農大と高橋の方法により実測して求め、どの時点でも病原菌密度の自然減少はないと仮定する。②は葉ダイコン(CR-1)の場合は、これまでに得られた結果から0.7または0.9を用いる。③は対象圃場の病原菌密度からDRC診断により発病度を予測し、その予測値から推定する(図2)。
  • モデルによるシミュレーションから圃場における病原菌密度の動態を推定でき(図3)、おとり植物の病原菌密度低減効果や罹病根すき込みの影響等を長期にわたり推定できる。

成果の活用面・留意点

  • 現地の農家圃場でおとり植物や他の防除資材を利用する際に、その防除効果の推定が可能で、資材利用の適否の判断を支援するための情報が提供される(図1)。
  • 予め対象圃場のDRC診断を行い、病原菌密度から発病を予測する必要がある。
  • 根こぶ病菌休眠胞子密度動態モデルの配布、支援は当チームで可能である。

具体的データ

図1.アブラナ科野菜根こぶ病総合防除システムにおける病原菌密度動態モデルの活用法

 

図2.アブラナ科野菜根こぶ病原菌菌密度動態モデルの入・出力画面

 

図3.本モデルによる休眠胞子密度変動のシミュレーション結果とその実測値

 

その他

  • 研究課題名:根こぶ病に対する土壌診断技術・耕種的防除技術の確立
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成12年度(平成10~13年)
  • 研究担当者:對馬誠也(農環研)・村上弘治・佐藤 剛・宍戸良洋
  • 発表論文等:A model for integrated control of clubroot disease caused by Plasmodiophora brassicae.
                      Conference handbook of 12th APPS Biennial Conference,299,1999.