ウシカテプシンD・cDNAの塩基配列決定および多型解析
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要約
屠殺後の牛肉の熟成に関与しているウシカテプシンDのcDNA配列を決定した。多型解析によりcDNAの8部位で変異を検出した。
- 担当:東北農業試験場・畜産部・家畜育種研究室
- 連絡先:019-643-3541
- 部会名:畜産(家畜)
- 専門: 育種
- 対象: 肉用牛
- 分類: 研究
背景・ねらい
カテプシン類はライソゾームに局在する酸性プロテアーゼの総称であり、屠殺後の肉の熟成に関与していると言われている。本研究ではウシカテプシン類のうち、塩基配列の報告がなかったウシカテプシンDのcDNAの配列を決定し、同時に多型解析を実施して変異の検出を試みた。
成果の内容・特徴
- ヒトカテプシンDのcDNA配列を基にPCRプライマーを設計した。ウシ末梢血白血球由来のRNAを材料にRT-PCRを実施し、得られたcDNA断片の塩基配列決定を行った。cDNAの両末端部分を除いた大部分の領域の塩基配列を決定した。
- cDNA配列およびそれから予想されるアミノ酸配列は、ヒトおよびブタとは85%程度の高い相同性を示し、マウスおよびラットとは80%程度、ニワトリとは70%程度の相同性を示した(表1)。
- 配列を決定したウシカテプシンDのcDNA配列を基に、再びプライマーを設計した。黒毛和種、日本短角種、ホルスタイン種およびジャージー種の各々10頭ずつのゲノムDNAを鋳型としてカテプシンD遺伝子のエクソン領域をPCRにより増幅した。また、上記とは別の黒毛和種11頭、日本短角種15頭および黒毛和種×日本短角種7頭の末梢血単核球から、RT-PCRによりウシカテプシンD・cDNA断片を増幅した。増幅した断片の塩基配列を決定して変異を検索した。その結果、成熟型カテプシンDの軽鎖領域で3部位、重鎖領域で3部位、成熟型移行に伴い除去される領域で1部位および3’-非翻訳領域で1ヵ所の合計8部位で多型を検出したが、いずれもアミノ酸配列には影響しなかった(図1)。
成果の活用面・留意点
- ウシカテプシンDのcDNA配列が決定され、今後は染色体上へのマッピングおよびゲノム構造の決定が可能となり、牛肉の品質とカテプシンD遺伝子との関係をさらに詳しく研究する助けになることが期待される。但し、これまでに見いだされた多型はいずれもアミノ酸置換を伴わず、カテプシンDの機能自体には影響しないものと考えられる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:肉質形質に関与する候補遺伝子の染色体マッピングと多型解析
- 予算区分:バイテク(動物ゲノム)
- 研究期間:平成12年度(平成9年~12年)
- 研究担当者:樋口幹人、長嶺慶隆、宮下範和(現・畜試)、粟田 崇(現・畜試)
- 発表論文等:ウシカテプシンD遺伝子の塩基配列決定および多型解析.
第96回日本畜産学会大会講演要旨、p.69,1999