β-ラクトグロブリンは哺乳子牛の脂質吸収を高める
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要約
β-ラクトグロブリン(BLG)の給与は、哺乳子牛の消化管からのレチノール、中性脂肪の吸収を高めた。また、BLG摂取により血漿総脂質に占めるパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸の割合が増加した。この作用は、BLGの生理機能が脂質成分の吸収を促進すること、BLGが脂肪酸に対する結合親和性を有することを示している。
- 担当:東北農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
- 連絡先:019-643-3546
- 部会名:畜産(家畜)
- 専門:畜産
- 対象:乳肉用牛
- 分類: 研究
背景・ねらい
BLGは牛の乳清タンパク質の主成分であり、初乳中に多く含まれる。BLGは人乳には含まれないことから、これまでは牛乳アレルギーの原因物質としての研究が主であった。BLGの生化学的特性として、in vitroにおける疎水性物質との結合親和性が明らかにされているが、その生理機能は未だ不明である。そこで、BLGの給与が哺乳子牛の脂質代謝に及ぼす影響を検討した。
成果の内容・特徴
- 10日齢のホルスタイン種雄子牛を用い、BLG(体重の0.04%)添加乳(BLG区、10頭)または無添加乳(対照区、10頭)にビタミンA(500,000 IU)を混和した。哺乳後の血漿レチノール濃度は、BLG区が対照区よりも有意に高く推移した(図1)。
- 10日齢のホルスタイン種雄子牛を用い、BLG添加乳(BLG区、9頭)または無添加乳(対照区、9頭)に乳脂肪(体重の0.08%)を混和した。哺乳後の血漿中性脂肪濃度は、BLG区が対照区よりも有意に高まった(図2)。また、哺乳9時間後における血漿総脂質の脂肪酸構成は、BLG区のパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸の割合が増加した(表1)。
成果の活用面・留意点
- 初乳期及び常乳移行期におけるBLGの生物学的機能解明のための基礎的データとして有効である。
- 消化管粘膜における吸収メカニズムについては別に検討を要する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:哺乳子牛の消化管におけるβ-ラクトグロブリンの作用と乳清タンパク質濃縮物の利用に関する研究
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成12年度(平成8~12年)
- 研究担当者:櫛引史郎、甫立孝一(現畜産試験場)、新宮博行、上田靖子、篠田 満
- 発表論文等:
1)Effect of whey protein concentrate on postprandial changes in plasma concentrations of retinol and triglyceride in preruminant.Anim.Sci.& Technol.,68,p1137-1140(1997)
2)Effect of BLG on plasma retinol and triglyceride concentrations,and fatty acid composition in calves. J.Dary.Res.,acceptance for publication.