飼料米の肥育豚への給与は増体が良好で皮下脂肪を改善する

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要約

飼料米を配合した飼料を豚の肥育後期に給与することで、1日あたり1kgの増体が可能である。50日間の給与で皮下脂肪は白くて硬く、また、脂肪酸組成ではオレイン酸割合が高くリノール酸割合が低くなる。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
  • 連絡先:019-643-3543
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:家畜栄養
  • 対象:豚
  • 分類:指導

背景・ねらい

我が国の畜産は海外から多量の濃厚飼料原料を輸入している一方で、稲作においては米の過剰により生産調整が強化されている。このような状況で、水田機能を維持し、かつ飼料を自給するためにはイネの飼料化が有効である。この場合、穀実利用(飼料米)は収穫が容易であり、また、豚・鶏などの単胃動物にも給与可能である。そこで、肥育豚を対象に玄米または白米給与が増体ならびに豚肉の品質評価で重要な脂肪の性状に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • トウモロコシ、玄米または白米を83%配合した飼料(その他大豆粕15%、ビタミン・ミネラル剤2%)を肥育豚に出荷前25日間または50日間給与し、増体および肉質を比較した。
  • 肥育豚における白米および玄米の嗜好性は良好である。出荷前50日間から給与することで1日当たり約1kgの増体が可能である(表1)。
  • 白米または玄米の50日間給与で、ロース部背脂肪の色はトウモロコシ給与区と比較して白さの違いがでてくる。また、白米給与と玄米給与では差は小さい(表2,表3)。
  • 玄米または白米を給与して生産した豚脂肪はトウモロコシ給与に比べてオレイン酸割合が高くリノール酸割合が低い。また、50日間給与のほうが25日間給与よりもトウモロコシ給与区との脂肪酸組成の差が大きくなる。全脂肪酸に占める飽和脂肪酸の割合はトウモロコシ給与、玄米給与、白米給与の順に高くなる傾向にあり(図1)、白米または玄米を50日間給与した豚のロース部背脂肪はトウモロコシ給与区よりも硬く感じられる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 玄米または白米の給与で硬くて白い脂肪の豚肉が生産できる。
  • 飼料米の低コストの供給が必要である。

具体的データ

表1.飼料米を給与した肥育豚の増体と飼料摂取量

 

表2.飼料米を給与した豚肉の枝肉格付とロース背脂肪の色

 

表3.ロースの背脂肪色の官能評価-選択率

 

図1.背脂肪(内層)の主要脂肪酸組成と飽和脂肪酸割合

 

その他

  • 研究課題名:東北における飼料米の品種開発と有効利用技術の確立
  • 予算区分 :経常(場特定)
  • 研究期間 :平成12年度(平成11年)
  • 研究担当者:篠田 満、上田靖子、新宮博行、櫛引史郎
  • 発表論文等:玄米または白米給与が肥育豚の発育および脂肪品質に及ぼす影響(口頭発表)
                      東北畜産学会報 第50回大会号、50巻2号、2000。