経営タイプ別にみた複粒播種方式による水稲直播栽培の適用条件

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

水稲直播栽培の導入タイプとしては、規模拡大型、複合経営型、ワンマンファーム型があるが、東北農業試験場で開発中の多少労力をかけても移植並の単収がねらえる複粒播種方式による水稲直播栽培は、複合経営とワンマンファームに向いている。

  • 担当:東北農業試験場・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:019-643-3492
  • 部会名:経営
  • 専門:経営
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

東北地域では従来の大幅な省力化が可能な散播による直播栽培に代わって、多少労力はかかるが移植並の単収が期待できる条播や点播などが増えてきている。特に、東北農業試験場が開発中の複粒点播方式による水稲直播栽培では、播種精度や耐倒伏性の向上により、現地試験において3年連続して移植並の収量を得ていることから、その適用条件を経営タイプ別に検討する。

成果の内容・特徴

  • 東北地域では直播栽培面積が急激に増加しているが、直播栽培を導入している経営タイプには、(1)移植栽培との組み合わせにより、作業ピークの緩和や一層の規模拡大をめざして直播栽培を部分的に導入する稲作規模拡大型、(2)複合部門との作業やハウス利用の作業競合回避をねらって直播栽培を導入する複合経営型、(3)育苗や移植における補助労働不足に対応するため全面積を直播に切り換えるワンマンファーム型がある(表1)。
  • 秋田県太田の現地実証試験の結果では、(1)直播作業は移植より2週間も早く開始できるが、収穫乾燥作業は同時期となるため作業競合が発生する(表2)。(2)育苗と田植えにおける組作業の解消によって春作業の大幅な省力化を果たした(表3)。
  • 以上の結果から、経営タイプ別に見た複粒播種方式による水稲直播栽培は、複合経営や補助作業を中心とした労働節約を重視するワンマンファームに関しては適用条件を満たしつつある。ただし、直播労働と移植労働では秋作業に競合があり、稲作規模拡大をめざすタイプへの適用に関しては、より省力的な技術が必要である。

成果の活用面・留意点

  • 10a当たりコストに関しては、育苗ハウスへの投資と労働費の削減効果が大きく、育苗資材や肥料費も節約される。ただし、農家では酸素供給剤が必要なため物材費の節約が小さい。

具体的データ

表1.現地試験農家・直播先進農家の経営概況

 

表2.現地試験農家における作業時期

 

表3.現地試験農家における労働時間と物財費

 

その他

  • 研究課題名:現地実証地域における稲作技術体系の特質解明と直播稲作システムの経営的評価
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成12年度(平成10~12年度)
  • 研究担当者:宮武恭一、折登一隆、角田 毅、長谷川哲哉
  • 発表論文等:水稲直播技術の経営評価に関する方法論的課題、東北農業研究、第52号(1999)、
                      東北地域における稲作農業のワンマン化と水稲直播栽培の普及、農政調査時報、第532号(2001)