食物アレルゲンに対するヒトモノクローナル抗体作製技術

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要約

ヒト末梢血リンパ球にエプスタインバールウィルスを感染させ,形質転換して不死化する。このなかから目的の抗体分泌細胞を選別後,マウスミエローマ細胞と融合することにより,食物アレルゲンに対するヒトモノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを得る。

  • キーワード:食物アレルギー,ヒトモノクローナル抗体,細胞融合
  • 担当:東北農研・作物機能開発部・加工利用研
  • 連絡先:024-593-6178
  • 区分:東北農業・流通加工
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

抗体を用いた食物アレルゲンの解析には,これまでアレルギー患者血清が用いられてきが,抗体価にばらつきがあり安定して食物アレルギー研究に供給できなかった。そこで本成果では,食物アレルゲンに対するヒトモノクローナル抗体を安定して分泌する細胞株作製技術を提供する。

成果の内容・特徴

  • ヒト末梢血リンパ球(図1-1)にエプスタインバールウィルスを感染させ,形質転換して不死化し,抗体を分泌するヒト不死化B細胞を作製する(図1-2)。培養上清に含まれる抗体を測定し,食物アレルゲンに対する抗体分泌細胞を選別する。
  • ヒト不死化B細胞はクローニングが困難なため,マウスミエローマ(骨髄腫)細胞と細胞融合する。用いるミエローマ細胞はアミノプテリン存在下で死滅する。これにさらにウアバイン耐性を付与した株を細胞融合に用いる。不死化B細胞はアミノプテリン存在下で増殖するが,ウアバイン存在下では死滅する。ミエローマ細胞はその逆である。このため,アミノプテリンとウアバインの両方の薬剤存在下では,不死化B細胞とミエローマ細胞が細胞融合したハイブリドーマのみが増殖する。(図1-3)
  • ハイブリドーマ培養上清中の食物アレルゲンに対する抗体を測定し,限界希釈法で抗体陽性細胞のクローニングを行って,食物アレルゲンに対するヒトモノクローナル抗体分泌マウス-ヒトハイブリドーマを得る。得られたヒトモノクローナル抗体を,免疫学的測定法による食物アレルゲンの検出に用いることができる。(図2)

成果の活用面・留意点

  • エプスタインバールウィルスを感染させたリンパ球は一般にはヒト不死化B細胞と呼ばれるが実際には数十回しか分裂増殖することができない。このため,なるべく早い時期にミエローマ細胞との細胞融合を行う必要がある。
  • 樹立したハイブリドーマは永続的に食物アレルゲンに対するモノクローナル抗体を分泌する。エプスタインバールウィルスはIgMを発現しているプレB細胞に感染するため,抗体はほとんどがIgMクラスである。モノクローナル抗体は食物アレルゲン蛋白質の抗体結合アミノ酸配列の特定,食物アレルゲンの検出,定量などに用いることができる。
  • 現在,作製したヒトモノクローナル抗体を用い,米アレルゲン,あるいはピーナツアレルゲンのアレルゲン構造の解析を行っている。

具体的データ

図1 . ヒトモノクローナル抗体 分泌細胞の作製過程

 

図2.5種類の抗ピーナツアレルゲン抗体の反応性

その他

  • 研究課題名:新規ヒト免疫系細胞株を用いた食物アレルギー発症の解明
  • 予算区分:(パイオニア)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:新本洋士,木村俊之,山岸賢治,鈴木雅博
  • 発表論文等:
    1)Shinmoto et al. (1999) Animal Cell TEchnology: Challenges for the 21st Century, pp167-170, Ikuraet al. eds,
       Kluwere Academic Publishers, Dordrecht, The Netherlands.
    2)Shinmoto et al. (2000) Biotechnology Letters, 22, 1823-1826.