根圏感応特性を有する新しい被覆肥料
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要約
皮膜中に炭酸カルシウムを含むポリエチレン被覆肥料は、微酸性条件下で溶出が速くなる特性を持つ。また、この皮膜で生理的酸性肥料の硫安を被覆することによって、根の酸性化作用により溶出が著しく促進される根圏感応性肥料を製造することが可能である。
- キーワード:被覆肥料、根圏、生理的酸性肥料、炭酸カルシウム
- 担当:東北農研・水田利用部・水田土壌管理研究室
- 連絡先:0187-66-2775
- 区分:東北農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
作物収量を維持・向上しながら、環境負荷の低減を図るためには、作物による肥料成分の利用率を向上させる必要がある。そのためには、肥料成分が溶出してから作物に吸収されるまでの時間的なズレを少なくすることが最も重要である。そこで、水稲を対象として、根が肥料の近傍まで伸張する前は溶出が抑制され、伸張後に根の酸性化作用により溶出が著しく促進される根圏感応性肥料を開発する。
成果の内容・特徴
- 炭酸カルシウムとポリエチレンで被覆した尿素(炭カル被覆尿素)と硫安(炭カル被覆硫安)を試作した。これらの試作肥料の溶出速度は、水中に比べて炭酸水中で速い(図1)。一方、市販されているポリエチレン被覆尿素の溶出速度は、水中と炭酸水中で変わらない。
- 炭カル被覆硫安は、水稲作付区において根が肥料近傍まで伸張した35日目以降では、非根圏土壌に比べて溶出が著しく促進され、この溶出速度の差は市販の被覆尿素よりも大きい(図2)。特に、非根圏では、44日目で溶出率が12%と低く、硫安の溶出が抑制されるのに対し、根近傍では5倍の溶出率を示す。
- 肥料近傍に存在する土壌溶液のpHは、市販の被覆尿素よりも炭カル被覆硫安で低く、また炭カル被覆硫安の場合は、近傍に水稲根が存在するとさらにpHが低下する(図3)。これは、溶出した硫安が水稲に吸収されるのに伴い硫酸イオンが残るので、肥料近傍の土壌が酸性化することを示している。このような土壌環境下では、皮膜中の炭酸カルシウムが溶解し、肥料内の硫安の拡散抵抗が低下するので、その後の硫安の溶出が速くなる。
成果の活用面・留意点
- 製品化・普及のために、生産性や利用率向上効果などについて検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:根圏感応性肥料の製造法に関する研究
- 予算区分:経常
- 研究期間:1999~2000年度(平成11~12年度)
- 研究担当者:加藤直人、渡貫孝浩(三菱化学)、住田弘一
- 発表論文等:1) 加藤ら(2001)特許出願(特願2001-039862)
2) 加藤ら(2001)日土肥学会講要集 47:182