新形質小麦品種・系統のブレンドによる製パン適性の向上技術

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要約

ウルチ性2品種の小麦粉のブレンドでは、少なくとも片方にグルテニンサブユニット5+10(GS5+10)を持つものを用いると、生地物性・製パン性の改良効果が期待できる。ウルチ性品種にモチ性品種を10~30%をブレンドした場合でも、ウルチ性にGS5+10を持つ品種を用いると、パン体積・官能評価の改良効果が期待できる。

  • キーワード:小麦品種、新形質、製パン適性、ブレンド、高分子量グルテニンサブユニット
  • 担当:東北農研・作物機能開発部・麦育種研究室
  • 連絡先:019-643-3512
  • 区分:東北農業・畑作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

東北地域はパン用小麦に対する需要が高いため、東北農研においても最近製パン適性の高いパン用系統や、従来のパン用粉にブレンドして食感の改良が期待できるモチ性小麦を育成している。また、実需者に高品質で大規模ロットのパン用小麦を供給するため、カナダ産1CWやアメリカ産DNSのような高品質で安定したブレンド銘柄の開発が望まれている。そこで、蛋白含量、グルテンの質及びアミロース含量が異なるパン用品種・系統をブレンドすることにより、製パン適性の安定化技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • ウルチ性2品種における小麦粉50%+50%のブレンドでは、少なくとも片方の品種にグルテニンサブユニット5+10(GS5+10)を持つものを用いると、生地物性・製パン性の改良効果が期待できる。特に、パン用同士の1CW+東北214号、1CW+東北215号、1CW+コユキコムギ及びハルイブキ+東北214号のブレンドでは、生地物性・製パン性の改良効果が大きい。一方、GS5+10を持たない品種同士のブレンドでは、生地物性・製パン性の改良効果はあまり期待できない(図1)。
  • 低アミロース品種・系統とパン用のハルイブキ又は市販強力粉(いずれもGS5+10有)との小麦粉50%+50%のブレンドでは、パン体積が大きくなり、パンが柔らかくで味が良くなり、官能評価が向上する(表1)。
  • モチ性品種・系統とウルチ性品種との小麦粉ブレンドでも、ウルチ性にGS5+10を持つ品種を用いると製パン性の改良効果が期待できるが、それを持たない場合は改良効果はみられない。ウルチ性のハルイブキ又は1CW(いずれもGS5+10有)の小麦粉にモチ性小麦品種・系統の小麦粉を10~30%ブレンドした場合は、ウルチ性品種だけよりパン体積がやや大きくなり、パン内相が柔らかくて、もちもち感が強くなり、官能評価が向上する(表2)。
  • ブレンドによる製パン性の良否は、ファリノグラムのバロリメーター・バリューの高低で推定できる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 実需者におけるパン用粉のブレンド技術として活用できる。
  • ブレンドに際しては、小麦粉の蛋白含量が10%以上のものを用いる必要がある。

具体的データ

図1 高分子量グルテニンサブユニット5+10の有無の異なるパン用品種を供試して、2品種・系統を50%+5 0%の比率でブレン ドした場合のパン 総合評価点の年次 間関係

表1 低アミロース品種・系統とハルイブキ、市販強力粉とのブレンドによる製パン性の向上

表2  モチ性小麦「もち乙女」とウルチ性品種・系統のブレンドによる製パン性

表3  ウルチ性同士又はウルチ性とモチ性のブレンドによるパン総合評価点と粉蛋白含量及びファリノグラム特性との相関係数

その他

  • 研究課題名:新形質小麦系統のブレンドによる製パン適性の安定化技術
  • 予算区分:麦緊急開発、21世紀プロ1系
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:吉川 亮、中村和弘、伊藤美環子、八田浩一
  • 発表論文等:吉川ら(2000) 東北農業研究 53:81-82.