放牧牛は林床ササ植生中のブナやスギ稚樹の生育を助ける
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要約
ブナ林伐採跡地に放牧された牛は林床のササ植生を採食し、その高さや被度を低くする。その結果、ササ植生に混生するブナやスギの稚樹の生存率が高まり、また生育が促進される。
- キーワード:生態、肉用牛、ササ、スギ、稚樹、放牧、ブナ
- 担当:東北農研・畜産草地部・放牧管理研究室
- 連絡先:019-643-3562
- 区分:東北農業・畜産、畜産草地
- 分類:技術 ・参考
背景・ねらい
かつて東北で広く行われていたブナ林への牛馬の放牧は、ブナの天然更新を促進すると言われてきたが、その過程は明らかではない。そこで、ブナ林伐採跡地のチシマザサ(以下ササという)植生に混生するブナやスギ稚樹の生育に及ぼす放牧の影響を解明する。
成果の内容・特徴
- 日本短角種繁殖牛約30頭が5月初旬から10月下旬まで放牧されている秋田県鹿角市の林野内(800ha)のブナ林が91年に伐採され、その後にササが優占した植生において、放牧牛によるササの採食がブナやスギ稚樹の生育に及ぼす影響を調査した。
- 放牧牛によるササの被食頻度は、搬出路(伐採作業時の木材搬出道路であり、今は牛道化している通路)から近い3m以内で高く、それ以遠は低い。これに対応して搬出路に近接した場所ではササの高さが低くなり(図1)、一方ササ植生中のブナ稚樹の密度および樹高はともに高くなる(図2)。
- 97年に設定した放牧および禁牧の処理では、放牧区のササは高さ、被度ともに年次を追っても大きな変化はなく低い水準に留まるが、禁牧区では著しく増加する(図3)。処理開始4年目以降、ブナやスギの稚樹の生存率は、放牧区が禁牧区より高くなる。また、樹高も放牧区で高くなる(図4)。
成果の活用面・留意点
- 森林植生の遷移機構および有用樹種の天然更新における放牧牛の役割を理解するための参考資料となる。
- 対象とした放牧林野一帯はブナ林とスギ造林地が混生している。
具体的データ
その他
- 研究課題名:有用飼料草の低投入導入技術の開発
- 予算区分:交付金プロ
- 研究期間:1997~2001年度
- 研究担当者:福田栄紀、目黒良平、八木隆徳
- 発表論文等:福田ら(1998)日草誌 44(別):36-37.