東北地方の大規模林間放牧地における日本短角種の行動特性

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要約

夏山林間放牧における日本短角種繁殖雌牛の牛群は、血縁や飼養農家によるサブグループを基礎に新植地をえさ場に、広葉樹林帯を休息場に、林道・搬出道を移動に利用して、数百ヘクタールの広域を行動する。

  • キーワード:日本短角種、林間放牧、家畜行動、肉用牛、資源利用、摂取植物、サブグループ
  • 担当:東北農研・総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:019-643-3412
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

未利用資源としての植林地の利用とあわせて下刈り効果をねらう林間放牧が注目されている。日本短角種は放牧共用林野方式の中で維持されてきた肉用牛品種であり大規模林地の回遊特性に優れ野草や樹葉を非選択的に利用し、子育て能力が高く、低投入の林間放牧に最も適した品種とされる。しかし、数百ヘクタールに及ぶ林野をどのように合理的に利用しているのか不明である。そこで、広域林地における牛群の行動(移動・採食・休息)を解析し、合わせてGPS利用の可能性についても検討する。

成果の内容・特徴

  • 試験地はブナを主体とする広葉樹林内に各種の林齢のスギの二次林が小林班としてパッチ条に配置された国有林野で、放牧共用林として川上牧野組合が夏山放牧利用を行っている。
  • 日本短角種雌牛群は全群で一夏に800ha内外の広域を行動している(図1)。各個体毎の行動域は約500ha程度であるが、個体の一日の移動距離は2km程度で牧草地放牧の場合と変わらない(図2)。
  • 血縁や同一農家出身という結びつきを基盤に、3~4グループに分かれて行動する。
  • 放牧中には非常に多種類の植物を摂食するが、植林地内のスゲ、フキ、ササの摂食割合が高い(図3)。
  • 行動域の中ではスギの新植地(幼齢林地)を主体とする3地域を利用し、1地域を1週間程度連続的に利用した後、他の地域に移動することが明らかとなった。この場合、主として新植地をえさ場に、広葉樹林地を休息場に、林道・搬出道を移動に利用する(図4)。
  • GPSによる行動の記録と、GIS(地理情報システム)による位置の判定から、放牧牛の長期にわたる詳細な位置情報が得られる(図5)。

成果の活用面・留意点

  • 無牧柵林間放牧における牛群管理技術開発の基礎的資料となる。
  • 品種や植生の異なる他の地域では異なる行動特性となるものと考えられる。

具体的データ

図1.川上牧野の牛群の行動圏 図2.個体の移動距離(4頭平均;10時間)

 

図3.採食植物と採食割合 図4.行動形別環境利用頻度

 

図5.GPSによる「もりたから」の位置

その他

  • 研究課題名:「大牧区における牛群行動特性の解明」および
                      「無牧柵大規模林地における放牧牛の土地利用特性の解明」
  • 予算区分:交付金プロ(赤肉生産)・経常
  • 研究期間:1997~1999, 2000~2001
  • 研究担当者:須山哲男、三田村強、竹中昭雄、渋谷幸憲、佐藤衆介(東北大学)、安江健(茨城大学)
  • 発表論文等:杉山ら(2001)日草誌47(別)176-177.