粗飼料多給型肥育における枝肉中の赤肉および脂肪量の増加

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要約

粗飼料多給型肥育において、黒毛和種では枝肉重量の増加にともなって赤肉、脂肪量とも同程度の割合で増加するが、日本短角種では脂肪の蓄積が赤肉の増加を上まわっている。また、その程度は部位によって異なる。

  • キーワード:日本短角種、粗飼料多給、肥育、枝肉重量、脂肪蓄積量、赤肉、回帰係数
  • 担当:東北農研・総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:019-643-3412
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

枝肉の取引は主に格付等級による単位重量あたりの値段によって行われることから、枝肉の重量が大きければ大きいほど価格が高い。黒毛和種では体重の増加、すなわち枝肉重量が大きくなっても、脂肪交雑等によって枝肉の価値は上昇するが、日本短角種では、脂肪交雑が入りにくく皮下脂肪のみが多くなり、枝肉重量の増加は可食肉割合の低下などを招いて評価を下げてしまうことが多かった。バラなど一部の部位では濃厚飼料多給型肥育の場合は特に枝肉重量の増加によって脂肪含量が著しく増加することが明らかとなっていたが、その他の部位についての考察はあまりなされていなかった。脂肪蓄積があまり多くないと考えられる粗飼料多給型肥育において、赤肉量と脂肪蓄積量の正確な情報が求められていた。

成果の内容・特徴

  • 粗飼料多給型肥育(粗飼料はグラスサイレージを飽食、濃厚飼料は1日あたり原物で体重の約1%に制限給与)を行った日本短角種去勢牛(51頭)および黒毛和種去勢牛(5頭)の枝肉歩留は日本短角種59.6±2.1%、黒毛和種62.5±1.4%で黒毛和種が有意に高く、また、可食肉割合も日本短角種50.3±3.0%、黒毛和種で54.0±3.2%で黒毛和種が有意に高かった。
  • 左半丸について、赤肉、脂肪、骨の重量を各部位ごとに測定し枝肉重量との相関を解析した結果、枝肉全体では脂肪の蓄積量は枝肉重量の増加にしたがって日本短角種、黒毛和種とも同程度の回帰係数で増加していた。一方、赤肉については、黒毛和種では脂肪と同程度の係数で増加していたが、日本短角種では増加係数は半分程度であった(図)。
  • バラについては、日本短角種の脂肪蓄積量は赤肉の増加量をはるかに上まわっていた。また、モモについても日本短角種では赤肉の増加量に比べて脂肪の蓄積が多かった。ロイン部では、日本短角種も黒毛和種と同程度に赤肉量と脂肪量が増加していた(図)。
  • 濃厚飼料の給与量を粗飼料多給型の2倍程度に増やした日本短角種の濃厚飼料多給型肥育では、すべての部位で赤肉量がそれほど多くならずに、脂肪の蓄積が多い傾向にあった。粗飼料のみを給与して肥育した日本短角種はいずれの部位でもほぼ回帰直線上にあった(図)。

成果の活用面・留意点

  • 枝肉重量が大きくなるに従って日本短角種では赤肉量がそれほど増加しない反面、脂肪蓄積量が増加することから、適正な体重での出荷が望ましい。
  • 粗飼料多給型の肥育について、枝肉重量から赤肉および脂肪量の推定のための基礎データとして活用できる。
  • 粗飼料多給型肥育においての結果であり、濃厚飼料を多給した場合や飼料によっては結果が異なる可能性がある。

具体的データ

図.枝肉重量と赤肉・脂肪・骨量との相関

その他

  • 研究課題名:周年出荷のための2シーズン放牧・肥育技術の確立
  • 予算区分:交付金プロ(赤肉生産)
  • 研究期間:1997~2001年度
  • 研究担当者:竹中昭雄、澁谷幸憲、須山哲男、篠田満、近藤恒夫
  • 発表論文等:1) 竹中ら(2000)第97回日本畜産学会大会講演要旨集p.15