苗立枯れ症を抑制する菌食性トビムシの簡易大量飼育法

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要約

リゾクトニア菌によるアブラナ科野菜の苗立枯れ症の発症を抑制する菌食性トビムシの一種、ヒダカフォルソムトビムシは、麹を餌とし、市販の粒状培養土中で簡易に飼育できる。

  • キーワード:菌食性トビムシ、麹、粒状培養土、苗立枯れ症、大量飼育法
  • 担当:東北農研・畑地利用部・畑土壌管理研究室
  • 連絡先:024-593-6176
  • 区分:東北農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

菌食性トビムシの一種であるヒダカフォルソムトビムシ(Folsomia hidakana)は、糸状菌Rhizoctonia solaniにより発症する苗立枯れ症を、菌糸を摂食することにより抑制する。このトビムシを簡易に大量増殖する方法が確立すれば、ヒダカフォルソムトビムシによる苗立枯れ症に対する生物防除的手法への可能性が開ける。そこで、ヒダカフォルソムトビムシを人工的に増殖するための好適飼育条件を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • ヒダカフォルソムトビムシは、小型容器内で粒状培養土を湿度保持体として用い、簡易に飼育できる(図1)。
  • 加える粒状培養土の量は多い方が増殖速度が速いが、多すぎると壁面を上って蓋と容器の隙間へ入り込む個体が多くなるので、250mlの容器で100g程度の粒状培養土が適当である(図2)。
  • 飼育温度は22~24℃付近が適し、26℃以上では増殖率が低下する。また、粒状培養土表層に置いた麹を餌として、250mlの容器で、最大12,000個体まで増殖する(図3)。
  • 粒状培養土の水分率は乾土重比40%以上でほぼ同等の増殖率を示すが、60%以上では飽和水分量を越える。よって、水分率は乾土重比40~50%が適当である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 大量のトビムシを常時飼育することが可能になるので、菌食性トビムシを利用する苗立枯れ症防除手法の開発に関する研究に貢献する。
  • 麹を餌とした場合、500個体の成体は6週間で約10,000個体に増殖し、これはセルトレイ一箱に施用するのに十分な値である。但し、増殖率の変動を考慮し、8週間程度飼育した方が確実である。
  • 餌として与える麹の量は、5g程度が適当であり、2週間に一度交換すればよい。

具体的データ

図1 ヒダカフォルソムトビムシの簡易大量飼育法

 

図2 湿度保持体と増殖率の関係

 

図3 飼育温度と増殖率の関係 図4 粒状培養土の水分率と増殖率の関係

その他

  • 研究課題名:セル成型苗育苗時におけるトビムシ類の生態と苗立枯れ症防除効果の解明
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:2000~2001年度
  • 研究担当者:白石啓義、江波義成、岡野正豪
  • 発表論文等:Shiraishi et al. (2000) 13th Internat. Colloquium Soil Zool. Abstr. 141