寒冷地における不耕起畑雑草植生の特徴

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要約

寒冷地の不耕起畑では、不耕起開始後まずキク科の多年草や二年草などの増加がはじまり、その後さらにイネ科多年草などが加わる。冬作では特有の多年草などの優占度が高まるが、夏作ではメヒシバなどの夏生一年草が優占し、耕起畑との類似性が高くなる。

  • キーワード:不耕起、雑草植生、多年草、夏生一年草、乗算優占度
  • 担当:東北農研・畑地利用部・作付体系研究室
  • 連絡先:024-593-6177
  • 区分:東北農業・畑作物
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

不耕起畑作でも雑草防除は問題となるが、除草剤の多用は望ましくない。このため、なんらかの耕種的な防除手法の導入が必要だが、その前提となる不耕起畑における雑草生態に関するデータは我が国では限られている。このため、東北農研畑地利用部(福島市)で10年以上不耕起栽培が続けられている圃場などを対象とした調査により、不耕起畑の雑草植生の特徴と優占する雑草の種類を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 不耕起畑における雑草の植生構造は耕起畑と異なる季節消長を示す。具体的には、耕起畑では夏生一年草と冬生一年草の入れ替りが認められるが、不耕起畑では季節的に生活環の異なる種の優占が認められる。すなわち冬作ではハルジオンなど特有の多年草の優占度が高まるが、夏作では耕起畑と同様にメヒシバなどの夏生一年草が優占し、耕起畑との類似性は高くなる(図1)。
  • 不耕起畑における雑草の植生構造の変遷には、ハルジオンなどのキク科多年草や二年草などの増加がはじまる第1段階と、不耕起が長期におよび、さらにハルガヤなどのイネ科多年草などが見られるようになる第2段階がある(図2)。
  • 乗算優占度(被度×草高)は、不耕起畑、耕起畑のいずれでも被度や拡張積算優占度に比べて雑草現存量との相関が安定して高いので、雑草現存量のよい指標となる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 被度と草高の調査は短時間で多数のデータの採取が可能であり、かつ、乗算優占度(被度×草高)により雑草現存量が精度高く推定できるので、畑雑草植生の調査手法として有効である。
  • 東北地方の畑作における植生調査の時期は、不耕起畑、耕起畑とも、調査・解析のしやすさと最終的な作物との競合度合いを反映させるという観点から、夏作および冬作で、それぞれ雑草現存量が最大になり、植生構造が典型を示す8月~9月および5月頃が適当である。
  • 本成果から、不耕起栽培を行った場合に防除上重要となる雑草の種類が推定できる。例えば、夏作では不耕起栽培でもメヒシバなどの夏生一年草が防除対象として重要であると考えられる。
  • 調査を実施した不耕起畑は、いずれも播種時の溝切り以外に土壌の攪乱のない畑である。

具体的データ

図1 10年連続不耕起および耕起畑 表1 雑草の現存量(乾燥重)と被度(C)、拡張積算優占度(E-SDR2)およ び乗算優占度(C×H)との相関係数.

 

図2 夏作および冬作の雑草の植生構造.

その他

  • 研究課題名:不耕起圃場における雑草生態の解明に基づく耕種的雑草管理技術の開発
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:小林浩幸、三浦重典、長谷川浩、小柳敦史、渡辺好昭(作物研)、中村好男(現愛媛大)
  • 発表論文等:1)小林ら(1999)雑草研究44(別):230-231.
                      2)小林ら (2000) 東北農業研究53:93-94.
                      3)小林ら (2001) 雑草研究46(別):240-241.