腫瘍壊死因子(TNFα)は牛の成長ホルモン(GH)分泌を抑制する

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

TNFαの投与は、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)を介したGH分泌を抑制する。この作用は、TNFαが下垂体GH分泌細胞に影響を及ぼし、さらには発育や生産性にも関与していることを示している。

  • キーワード:TNFα、牛、GHRH、GH
  • 担当:東北農研・畜産草地部・栄養飼料研究室
  • 連絡先:019-643-3546
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

サイトカインは生理活性物質として主に免疫機能を制御するペプチドの総称である。なかでもTNFαは内分泌機能及び栄養代謝にも関与していることが報告されている。牛におけるTNFαの機能は解明されつつあるが、生産性と密接に関わるGH分泌への影響は不明である。本研究はGH分泌を制御するGHRHの作用に対するTNFαの影響を検討した。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン(H)種未経産牛の頸静脈よりTNFα(5.0μg/kg)とGHRH(0.25μg/kg)を同時投与すると、GH上昇が一時的に抑制され、直後にリバウンドと思われる大きなピークが出現する(図1)。
  • H種育成牛(去勢、10ヶ月齢)にTNFα(5.0μg/kg)を連日皮下注射し、GHRH(0.25μg/kg)の負荷試験を行うと、GH分泌反応が抑制される(図2)。
  • 発育ステージの影響を検討するために、肥育牛(20ヶ月齢)にTNFα(2.5μg/kg/日)の連日注射を行い、GHRH(0.25μg/kg)の負荷試験を実施すると、TNFαはGHRH刺激GH分泌を抑制する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • TNFαが牛のGH分泌機能に影響することをin vivoで証明した初めての知見であり、生産性におけるTNFαの機能を解明するための重要な情報である。
  • 牛の下垂体細胞におけるTNFα受容体の機能解明につながる。
  • TNFαにより発現が誘導される他のサイトカインの影響を検討する必要がある。

具体的データ

図1.TNFαとGHRHの同時負荷後における血漿GH濃度の変化、平均値±SE、*P<0.05

図2.TNFαを連日注射した育成牛におけるGHRH投与後の血漿GH濃度変化、平均値±SE、*P<0.05

 

図3.TNFαを連日注射した肥育牛へのGHRH投与がGH分泌反応(濃度曲線下面積、nAUC)に及ぼす影響、平均値±SE、*P<0.05

 

その他

  • 研究課題名:乳牛及び肉用牛へのサイトカイン投与が内分泌機能及び生産性に及ぼす影響の解明
  • 予算区分:交付金プロ(サイトカイン)
  • 研究期間:1997~2002年度
  • 研究担当者:櫛引史郎、甫立孝一、新宮博行、上田靖子、嶝野英子、篠田 満、横溝祐一
  • 発表論文等:(1) Administration of rbTNF affects intermediary metabolism and insulin and GH secretion in dairy
                      heifers. J Anim Sci, 2000. 78:2164-2171.
                      (2) Effects of long-term administration of rbTNF on glucose metabolism and GH secretion in steers. Am
                      J Vet Res, 2001. 62:794-798.
                      (3) Insulin resistance induced in dairy steers by rbTNF is partially reversed by 2,4-TZD. Domest Anim
                      Endocrinol, 2001. 21:25-37.